HORIBAグループで半導体事業を展開する堀場エステックは、次世代圧力式マスフローコントローラの新製品「CRITERION(クライテリオン) D700T」および「CRITERION D700μF(マイクロフロー)」を12月13日に発売することを発表した。
半導体製造において、基板上の回路を形成するためにはエッチングや成膜といった工程を経る必要があり、昨今の先端半導体デバイスにおける微細化・3次元構造化といった進化に伴って、生産性や歩留まりの向上に寄与するガス制御性能の高度化が求められている。
こうしたニーズの高まりを受け、堀場エステックは2022年、圧力式マスフローコントローラ「CRITERIONシリーズ」のハイエンドモデルとして「D700」を発売した。そして今般、高速応答や低流量域での制御、再現性改善などといった多様化・細分化する課題の解決に貢献するため、新たに2機種の開発に至ったとしている。
新製品のうちD700Tは、CRITERIONシリーズの最上位モデルであり、2本のバルブを直列に配置したツインバルブ構造と新開発の制御アルゴリズムを採用することで、立ち上がりから立ち下がりまでの全制御流量域で0.1秒以下という高速応答を実現。これにより連続プロセスにおけるガス切り替え時間を短縮でき、生産性向上につながるとする。
また、半導体製造装置から取り外すことなく、マスフローコントローラの流量精度、圧力センサ、制御バルブの経時変化を自己診断することが可能となったといい、異常原因の特定によって半導体製造工程のダウンタイムを未然に防ぐことができる。
さらに、ガスを取り入れる際に発生する上流側の圧力の瞬時変動に影響を受けない「Pressure Insensitive機能」を向上させることで、下流側(チャンバーにガスを供給する側)における微細な圧力変動の影響を抑制し流量制御のさらなる安定化を実現し、プロセスにおける異常や故障のリスクを低減させるとする。加えて同製品では、精度は±0.8%、再現性は±0.15%という業界最高レベルの性能を達成し、半導体製造装置間の機差低減による歩留まり向上に貢献するとのことだ。
一方、業界最小レベルの超小流量の制御を強みとするD700μFにおいては、小流量計測に特化した部品開発を行ったという。併せて、HORIBAの京都福知山テクノロジーセンターで新規開発した流量基準器を用いることにより、最小0.025SCCM(特定条件下に置いて1分間あたりに流れる体積)を高精度で計測制御することが可能になったとのことだ。HORIBAはこれらの開発により、微細化が進む先端メモリプロセスなどの微小流量制御が歩留まりを左右する工程において、その性能改善に貢献するとともに、ガス使用量の抑制による環境負荷低減にも寄与するとした。
なお堀場エステックによると、今回発表された製品は、2023年12月13日から15日まで東京ビッグサイトで開催される「SEMICON Japan 2023」にも出展予定だとしている。