ソフトバンクは12月5日、IoTプラットフォーム事業を手掛けるアイルランドのCubic Telecom(キュービックテレコム)を買収すると発表した。約4億7300万ユーロ(約747億円)を出資し、企業価値が約9億ユーロ以上ある同社株式の51%を取得する。海外企業への出資では過去最大で、国内子会社のヤフーやLINE、PayPayに次ぐ規模だという。

ソフトバンクは同買収により、グローバルIoTプラットフォーム事業に本格参入する。コネクテッドカーやSDV(Software Defined Vehicle:インターネットに接続されたソフトウエアを通じて機能を更新することができる車両のこと)、IoTモビリティ(バイク、大型貨物車、ドローンなど)領域においてグローバル規模で主導していく考えだ。IoTプラットフォームにおいて世界トップのシェア獲得を目指す。

2009年に設立したキュービックテレコムは、アイルランドの首都ダブリンに本社を置き、330人の従業員を抱える。世界190カ国・地域以上で自動車や交通車両、農業機器向けのIoTプラットフォームを提供しており、2016年にコネクテッドカー向けIoTプラットフォームの提供を初めて開始した。独フォルクスワーゲンや英ベントレーといった世界の大手の自動車メーカー(OEM)などが顧客で、世界で1700万台以上の車両で利用されている。

接続車両数は毎月45万台ずつ増加しており2025年までに月70万台を目指すという。また、世界の90以上の通信キャリアと接続可能で、毎日10億件のモバイルインターネットによるデータ通信を実現している。

このプラットフォームにより、OEMはモバイルネットワークを通して、車両や機器をグローバル規模でリアルタイムに監視・管理し、関連する機能をアップデートすることができる。また、各国・地域で異なる規制などに準拠しながら、各種条件に対応できる点が特徴だ。

米マッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書によると、2030年までに世界で販売される新車の95%がコネクテッドカーとなり、エコシステム全体に年間約2500億~4000億米ドル(約38兆~60兆円)規模の価値の増加をもたらすと予測されている。

コネクティビティによりOTA(Over the Air)でさまざまな新しい機能が継続的にアップデートされ、パフォーマンスや安全性、快適性が向上するという。アルコール義務化への対応や盗難防止、自律走行といったユースケースが考えられる。

ソフトバンクはこれまで、主にアジア太平洋(APAC)地域においてグローバルIoT事業を展開してきた。今回の買収により、急成長するコネクテッドカーおよびSDV市場向けのグローバルIoT事業へ本格的に参入し、新たな収益機会の創出を図る。

なお同取引の完了は、さまざまな国・地域の規制当局の承認およびその他の条件が前提となり、完了時期は2024年上期中を見込んでいる。買収後は、キュービックテレコムCEOのBarry Napier(バリー・ネーピア)氏が引き続きが経営をけん引する。