ESETは11月29日(現地時間)、「Very precisely lost – GPS jamming」において、全地球測位システム(GPS: Global Positioning System)が妨害され航空機が危険にさらされていると報じた。この危険な兆候は中東地域を中心に確認されているとして注意を呼びかけている。
国際線運航の会員組織「OPSGROUP」は2023年9月26日(28日更新)に、航空機の全地球測位システムが妨害を受けて航法能力を急速に喪失していると報じている(参考:「Flights misled over position, navigation failure follows – International Ops 2023 – OPSGROUP」)。ほとんどのケースにおいて慣性基準装置(IRS: Inertial Reference System)が使用不能になり、超短波全方向式無線標識(VOR: VHF Omnidirectional Radio range)/距離測定装置(DME: Distance Measuring Equipment)センサの入力に失敗、航空機の協定世界時(UTC: Coordinated Universal Time)に不具合が生じて航空交通管制(ATC: Air Traffic Control)に誘導を要求せざるを得ない状況になっているとされる。
慣性基準装置は飛行中に位置を更新するためにGPSシステムを使用しており、これが妨害されて正常に機能しなくなったために航法障害が発生したとみられている。OPSGROUPはこの現象の発生が報告されている主な地域をイラク北部のUM688空路と報じている。この妨害行為により、イラン領空にクリアランスなしで進入しそうになる事案も報告されているという。
ESETはこのようなGPSシステムを妨害する装置について、妨害範囲と距離で難易度は大きく異なるとしつつ、半径500メートル程度を妨害する小型のものは比較的安価で約1,000ドル程度で購入または作成できるとしている。また、この技術は広く拡散しており世界中で利用できるという。航空機を妨害する規模のものは難易度が高いとみられているが、自動運転技術を使用した車両を標的とするのであれば低予算で実現できるとして注意を呼びかけている。
今後普及が見込まれている自動運転車両はGPSシステムを使用して位置を確認しており、妨害装置の影響を受ける可能性がある。通常は妨害やノイズに対する防衛策が設けられており、妨害を受けても即座に事故につながるわけではない。しかしながら、交通網を麻痺させるなど混乱をもたらすことは可能とされ、妨害装置も一時的に使用する程度であれば発見は難しいとみられている。
ドローン配送サービスなど、GPSシステムを活用したさまざまなサービスの普及が今後見込まれているが、これらサービスを開発している企業にはこのような脅威からユーザーやデバイスを保護できるシステムの開発が望まれている。