パナソニック エナジーは2023年11月20日大阪府貝塚市に主に国内向け乾電池製造の旗艦工場に位置づけられた「二色の浜工場」の本格稼働を開始したことを発表した。

二色の浜工場はもともと旧三洋電機の太陽電池の生産工場として稼働していたものだが、パナソニック買収後に当該事業から撤退。一方で、パナソニックは大阪府守口市の守口工場にて長年にわたって乾電池を生産してきたが、工場の老朽化などの理由もあり、二色の浜工場に環境配慮型の新たな工場を建設。

2023年4月から一部の電池生産を開始し、11月からは本格稼働として「世界一長持ちする単3アルカリ乾電池」としてギネス世界記録に認定されている「EVOLTA NEO」をはじめとした単1形から単4形までの各サイズの生産を開始している。敷地面積は約4万2000m2、従業員数は約300人で、生産能力は全サイズ合計で月間最大約4800万個であり、守口工場での生産能力と大きく変わりはないという。

  • 大阪府貝塚市にあるパナソニック乾電池の新たな拠点「二色の浜工場」の外観

    大阪府貝塚市にあるパナソニック乾電池の新たな拠点「二色の浜工場」の外観

自動化で人に依存しない生産体制を構築

この二色の浜工場では、無人搬送フォークリフト(AGF)や天井搬送システム、自動ラック倉庫などで棟内外の搬送工程を自動化するなど、さまざまな自動化機器を導入することで人に依存しない工場のスマート化が推進されている。電池の完成から出荷までの自動搬送比率は80%超であり、特に包装工程における業務効率化は守口工場と比較して特徴的な点だとした。

  • 無人で乾電池を搬送するフォークリフト

    無人で乾電池を搬送するフォークリフト

  • 自動ラック倉庫の外観

    自動ラック倉庫の外観

守口工場でも、乾電池の製造工程においての自動化は行っていたという。しかし、完成品を包装工程に運搬する作業や在庫を保管し管理、出荷する作業は人の手によって行われており、人手が多く必要で時間と労力がかかっていたとのこと。

そうした課題を克服するため二色の浜工場では自動化設備を導入。製造を行う建屋と完成品を包装する建屋が分かれている中でも、人の手を介す必要はなく、建屋をまたいで自動搬送することができるようになったとする。

  • 天井搬送システムにより頭上を乾電池が搬送されていくA@天井搬送システムにより頭上を乾電池が搬送されていく

建屋間の自動搬送の仕組みは、電池製造を行う建屋にて乾電池の完成品が入れられたケースがある程度積み重ねられた段階で、それらのケースを無人搬送フォークリフトが建屋間をつなぐコンベヤーへと運搬し、包装を行う建屋への搬送を開始。そして、天井搬送システムでケースを一時的に保管する自動ラック倉庫もしくは包装を行う機械に運ぶという一連の流れで構成されており、人手を介さないことによる業務効率化ならびに乾電池の生産性向上が図られている。

未来へつなぐ地域共生の場となる二色の浜工場

「くらしの幸せをつくり、環境との調和をつくる。」をミッションに掲げている同社では、乾電池の国内シェアが約70%と大きな影響力をもっている。特に日本では災害が多く、そうした災害時に乾電池の需要が増える傾向にあるとし、どのサイズの乾電池でも明かりがつく「電池がどれでもライト」など、電池が1本あれば人々のくらしを守ることができるアイテムや、環境に配慮したエシカルパッケージの開発なども進めてきた。

  • どのサイズの乾電池でも明かりがつく「電池がどれでもライト」

    どのサイズの乾電池でも明かりがつく「電池がどれでもライト」

そうした中、今回の二色の浜工場新設では従業員が働きやすいエンゲージメントを高める工場づくりとしてオフィスデザインを工夫。「出社したくなるオフィス」を目指し、海が見える開放的な空間の中で従業員が気軽にコミュニケーションがとれるような設計が施されたほか、「未来へつなぐ地域共生工場」として、小学生を対象とした乾電池工場見学や手作り乾電池教室ができるエリアなどを設けており、小さい年齢の子供に科学の楽しさ、電池の不思議を体感してもらいたいとの思いのもと取り組みを推進している。

  • 手作り乾電池教室が行われる室内の様子

    手作り乾電池教室が行われる室内の様子

  • 手作り乾電池キットの外観

    手作り乾電池キットの外観

再生可能エネルギーで環境調和できる工場へ

二色の浜工場では製品だけではなく工場の生産における環境負荷低減に向けた取り組みも進めており、すでに工場の屋根や駐車場などの敷地内にはオンサイトPPAの太陽光発電パネルが設置されているほか、オフサイトPPAの太陽光発電パネルも導入済み。太陽光発電にて作り出した電力で工場全体の約2割をまかなうことができ、他はカーボンクレジットの購入を行うことで、CO2排出量を実質ゼロにすることができているという。

  • 屋根に取り付けられている太陽光パネル

    工場建屋の屋根に取り付けられている太陽光パネル

また、2024年度には純水素燃料電池や蓄電システム、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入予定。水素エネルギーと太陽光エネルギーで再生可能エネルギーを創エネ・蓄エネし、EMSでより効率的に再生可能エネルギーを活用できる工場の実現を目指すとしている。

  • 工場内にて乾電池が作られている様子

    工場内にて乾電池が作られている様子。今後は太陽光エネルギーだけではなく、水素エネルギーも活用し乾電池が生産されていく予定

なお、2024年度稼働予定の水素貯槽タンクは、外観をパナソニック製の電池に見えるようなデザインにする計画が進んでおり、地域のランドマークのような存在になるように建設を進めたい意向を示していた。