東京商工リサーチ(TSR)は11月30日、国内の主要飲食料品メーカー200社を対象に実施した、「価格改定・値上げ」調査の結果を発表した。これによると、2023年11月の飲食料品の値上げ公表は14社795品目であり、円安が理由の値上げが品目数の約7割まで上昇した。

2023年1~11月に値上げ対象となった3万2159品の理由を見ると、原材料が2万9995品(93.2%)で最も多く、以下、資源・燃料(2万6446品、82.2%)、物流(2万1231品、66.0%)が続く。

原材料は、飼料価格の急騰でバター類を12月に乳製品大手・中堅が値上げする。円安の長期化による影響も深刻化し、為替の構成比は13.0%と前月から0.4ポイント上昇し、3か月連続で拡大している。為替を要因とする値上げは今後も増加すると、同社は見ている。

  • 値上げ理由(品目数、重複あり) 出典: 東京商工リサーチ(TSR)

円安や海外からの調達コスト上昇(飼料含む)を主要因とした値上げの割合は、8月以降上昇している。11月判明分では、社数の71.4%、品目数の67.0%と、共に過半数となった。

1月はロシアのウクライナ侵攻による世界的な流通コストの上昇や小麦価格の上昇が大半を占めたが、ドル円相場が1ドル=145円台を付けた8月中旬以降、国内の原材料調達や物流コスト以上に、海外からのコスト高を要因とした値上げが深刻化した。

具体的な品目では、オリーブやごまなどの食用油原料、乳製品の生産に関わる飼料、調味料の原料となるトマトやジュースに使用する果実類など、食卓に身近な原料の調達コストの増加が顕著となっている。

  • 海外・為替要因の値上げ割合推移(判明月別) 出典: 東京商工リサーチ(TSR)

2023年値上げ分(11月まで)の分類では、最多は調味料(9327品、29.0%)で約3割を占めた。調味料は、ドレッシングや業務用スープ類に加え、原材料を輸入品に頼る中華調味料、香辛料などが目立つ。2024年もトマトの輸入コストの上昇でケチャップやパスタソースの値上げが、2月以降に予定されているという。

2位以下には、加工食品(8002品、24.8%)、飲料・酒(5760品、17.9%)が続いた。飲料・酒は、2024年春には一部の洋酒で輸送費の増加や現地メーカーからの引き渡し価格の変更に伴う値上げも行われ、同業各社が追随する可能性もあるとのこと。

  • 分類別の品目数(2023年) 出典: 東京商工リサーチ(TSR)

主要飲食料品メーカー200社が公表した2023年の出荷・納品分の価格改定は3万2159品に達し、2024年実施分も既に960品が判明している。しかし、これまでの値上げがひと息つき、実施ペースは11月・12月と1000品を下回る水準で落ち着いている。

一方、海外からの調達コスト(飼料含む)や円安を主要因とした値上げは、11月に公表した14社中10社(71.4%)、品目数では795品中533品(67.0%)まで拡大した。為替変動による価格転嫁は、メーカー各社の対応に委ねられており、海外からの調達コスト上昇を要因とした値上げは2024年も高い割合で推移しそうだと同社は見る。

また、商品パッケージに係る包材や資材も輸入原料やエネルギー価格が上昇しており、2023年に価格改定した商品の再値上げもありそうだと、同社は予想している。

  • 月別の価格改定品目数 出典: 東京商工リサーチ(TSR)

飲食料品の価格改定は、ハム・ソーセージ、だし類などで1年に2回以上の価格改定が行われた商品もあり、メーカー各社は物価上昇の対応を迫られているという。

2023年初頭から春は、国内外の原材料の不足感から来る値上げが大半だった。円安による値上げは6月(公表ベース、品目数)の8.4%を底に低い水準で推移していたが、8月以降は9月を除き40%を超える水準に上昇。11月分は67.0%と初めて半分以上を占めた。

政府が輸入売渡価格を引き下げた小麦を除き、果物やオリーブオイル、牛の飼料など、多様な輸入原料の価格が高騰しているといい、家計に与える影響は当面厳しい展開が続きそうだと同社は見ている。