2年に一度開催される世界最大規模のロボット専門展「2023国際ロボット展(iREX2023)」が2023年11月29日から12月2日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている。エプソン販売およびセイコーエプソンのブースでは、ユーザーに寄り添う形で自動化が難しい作業分野でも自動化を可能とするソリューションなどの紹介を行っている。
中でも全面的にエプソンが押し出していたのが“難作業”の自動化に向けたソリューション群。ロボットのみならず、自社の力覚センサや他社ソリューションとの組み合わせによって、ユーザーがロボットに任せたくても、なかなか実現できなかったさまざまな作業をロボットで実現できることを示す取り組みで、例えば水晶圧電方式を採用した6方向の力を感じ取れる力覚センサによる微小な力の検出によるノートPCのマザーボードで用いられるフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)/同軸ケーブルのコネクタの挿入をデモとして見ることができる。
ロボット(アーム)に取り付けられた画像センサや2Dビジョンを活用してコネクタの認識、力覚センサで得た値(波形)を基準に正しい進入角度で挿入されたのかどうかを含め判断し、よれやすいFFCであっても正確かつ適切な力でコネクタに挿すことができることを示していた。また、仮にコネクタがよれた場合であっても、ロボット側で自動で判断し、コネクタに挿せる状態に戻すことも可能とした点も実作業での活用という点でも重要だとブース担当者は説明していた。
このほか、力覚センサを使ったデモとしては、タカラトミーの黒ひげ危機一発にロボットで剣を指していく、というものも見ることができる(実際は来場者が黒ひげ危機一発を一緒にやり、ロボット含め人形を飛ばさずにより多くの剣を挿した人の勝ちというゲーム形式)。ロボットはこのデモでは、5Nの力で剣を樽に当たるまで移動させ、樽に当たる際の反発力を検知して樽表面の位置を把握。1Nの力で押しながら、移動することで樽の形状にならった動きをすることで、樽の反力がなくなった場所を穴が開いている場所と認識。一定の力で穴に剣を挿入をするが、挿入した際に、高分解能を活用する形で当たりの場合、瞬時に値の変化を判断して、人形が飛ぶまで押さずに引き抜き、別の穴に挿し直すことで最後付近まで当たりを引き当てないまま続行するという仕様となっている。人間の手の感覚では分からない微細な変化でさえも把握できる同社の力覚センサならではの所業と言えるものとなっている。
人間による目視検査に代わる分光ビジョンシステム
また別の難作業として、人間が目視で正確な色味かどうかを判断する目視検査を代替する「分光ビジョンシステム」の提案も行われている。
外観検査として、カメラを使って傷や汚れを検出する作業は自動化が進んでいるが、色味については目視検査がいまだに主流であり定量化できていないという。同システムは、人の目に見える光の波長帯(およそ380-780nmの可視光域)をJIS規格でも採用されているL*a*b*表色系で色として定量化することで、そうした目視検査を人の目ではなく分光カメラと検査ソフトウェアで代替することを可能としたもの。
デモとしては、メタリックカラーの色検査を分光カメラと3台のLED照明を活用して実施。各照明角度で照らされる検査対象品の分光情報を取得し、各画素のFI(メタリック指標値)を計算し、基準画像のFI値と比較して、しきい値に照らし合わせることで、メタリック感と色のOK/NG判定を行うというものを見ることができるほか、分光カメラ、ロボット、パーツフィーダーを組み合わせたグラデーションなどの微妙な色検査を可能としたデモも見ることができる。
人と協働で作業するロボットを食品業界向けに提案
このほか、2024年度に東山八ツ橋本舗が導入を決定している食品搬送用スカラロボットのデモなども同社ブースでは見ることができる。
こちらのデモは、生八つ橋を模した柔らかいサンプルをハンドで丁寧にピックアップし、トレイに詰めるというもの。従来、人の手で詰めていた作業を代替することを可能としたもので、食品機械用グリスや飛散防止用の蛇腹などを採用することでクリーンさを維持できるようにしつつ、価格としても中小企業であっても導入検討ができるレベルのものにすることができたとしており、さまざまな食品加工現場などでも活用してもらえるよう、100V対応モデルや防塵・防水モデルなども提供していく予定としていた。
また、人と協働という意味では、従来は安全柵などを必要としたスカラロボットに、人が接近してきたことを検知し、稼働速度などを抑えることで作業員との協働作業を可能とする安全機能対応スカラロボット「GX4-B/8-B」のデモも見ることができる。
これは安全規格「ISO10218-1」に対応した安全機能を装備したロボットコントローラ「RC-700E」を活用することで、人が事前に設定された動作制限領域に侵入した時に、その領域にスカラロボットが入らないといった設定や、動作速度を落として稼働するといった設定を施すことで、ロボットを止めることなく協働作業を可能とするソフトウェアオプション。動作速度などはユーザー側で設定ができるので、それぞれのユーザーニーズに応じた早さなどを選ぶことも可能となっている。
なお、同社ブースではこれらのユーザー課題に解決することを目指したソシューションのほか、参考出展としてペレット式3Dプリンターや部品生産と組み立てのインライン化を可能とする小型射出成型機もデモ展示されている。また、同社が約40年前に初めて外販した産業用ロボット「SSR-H-HSタイプ」の実機も展示されている。