北海道を中心に全国で90店舗以上のガソリンスタンドを運営するオカモトは2022年10月、一部店舗の洗車機に、NTTテレコンの「グッとびくん・M2」を使った水温監視を導入し、コスト削減に取り組んでいる。

「グッとびくん」は温度、湿度、照度、振動など、さまざまなセンサーと組み合わせることで、LPWA(Low Power Wide Area)通信を使って遠隔でセンターデータを取得できるシステム。また、ガスメーターや水道メーターに取り付けることによって、遠隔での検針を実現している。

  • NTTテレコンの遠隔監視 出典:NTTテレコン

    NTTテレコンの遠隔監視 出典:NTTテレコン

水温センサーの導入で年間1万リットルの灯油使用料を削減

オカモトのセルフガソリンスタンドであるオカモトセルフ音更(オトフケ)OK店(北海道帯広市)は一昨年、洗車機で利用する水の温度監視を「グッとびくん・M2」で行う仕組みを実験的に導入した。

  • オカモトセルフ音更(オトフケ)OK店(北海道帯広市)

    オカモトセルフ音更(オトフケ)OK店(北海道帯広市)

同店舗では、冬季に気温がマイナス20度にもなるため、洗車機で利用する水が凍結し、洗車機が利用できなくなる恐れがある。そのため、洗車機の水をボイラーで沸かしたお湯を利用して温め、凍結防止を行っている。

冬場は洗車機の利用が多い時期で、洗車待ちが2時間になることもあり、洗車機が使えなくなると売上にも大きく影響する。しかし、昨今、燃料である灯油が高騰しているため、ボイラーの運転を効率的に行うため、水温センサーを導入したのだ。

  • 水温監視の仕組みを導入した洗車機(2種類)A@水温監視の仕組みを導入した洗車機

  • 「グッとびくん・M2」による水温監視の仕組み

    「グッとびくん・M2」による水温監視の仕組み(出典:NTTテレコン)

オカモト 経営企画部 兼 情報システム部 統括マネージャー 川上公一氏

オカモト 経営企画部 兼 情報システム部 統括マネージャー 川上公一氏

オカモト 経営企画部 兼 情報システム部 統括マネージャー 川上公一氏は、水温監視の仕組みを導入した背景について、次のように説明する。

「この近辺は冬場はマイナス20度くらいになりますので、常に温かいお湯を水槽に入れておかないと凍ってしまいます。冬は熱湯を使ってお湯の温度を調整していますが、これまでは勘に頼っていました。そのため、本当は温かくする必要がないケースでもボイラーを稼働させているところに課題がありましたので、センサーを使って管理しようと考えました」

オカモトセルフ音更OK店では、分析のために、30分ごとの水温データをクラウド上にアップしているほか、水温が設定した温度に達するとスタッフに即座にメールが飛ぶようになっている。スタッフは、このメールによってボイラーのON/OFFや火力調整のタイミングを図っている。

  • 「グッとびくん・M2」による温度管理データ

    「グッとびくん・M2」による温度管理データ 出典:NTTテレコン

同店舗では冬季、店が営業していない夜間でも、ボイラーを稼働させている。これまでは経験を頼りにボイラーの火力調整を行っていたが、センサーを付けたことによって、水温の変化を把握できるようになり、より厳密にしきい値の管理が行えるようになった。

  • 洗車機にお湯を供給するボイラー

    洗車機にお湯を供給するボイラー

それにより、昨シーズンは1万リットルの灯油使用料の削減に成功した。特に効果が出たのがシーズンインの11月とシーズンアウトの3月だ。この時期は、凍る日もあれば凍らない日もあり、ボイラーを切るタイミングの判断や火力調整が難しい。そのため、システムが役に立ったという。

ガス検針と同じ端末を水温監視に変更して利用

オカモトは、LPガスの提供も行っており、NTTテレコンの自動検針の仕組みは数年前から導入していた。そこで、雑談ベースで洗車機の水温センサーを使って管理したいと相談し、そこからディスカッションを重ね、今回のソリューション導入につながった。

NTTテレコン 企画本部 BBXビジネス推進室 担当部長 和田佳氏

NTTテレコン 企画本部 BBXビジネス推進室 担当部長 和田佳氏

システムを提供したNTTテレコン 企画本部 BBXビジネス推進室 担当部長 和田佳氏は、オカモトに導入したシステムについて、次のように説明した。

「ガス検針と同じ端末を、水温センサーに付け替えるだけで実現しました。温度が閾値に達したときにメールを飛ばす仕組みは、当社が持っていた機能を水温監視に流用したため、簡単に導入できました。当社の端末は、市販のセンサーを買ってきてつなぎさえすれば使えます。今回導入した通信端末は当社のものですが、水温を測るセンサーは市販のものです。水温を測るセンサーにも、水の中にぶら下げて使うタイプや棒状で壁面に固定するタイプなどいろいろあり、今回の用途でいえば、一番施工しやすい観点で選びました。測定できる温度もさまざまですので、センサーを選定するところからお手伝いしました」

  • 洗車機の配電盤に取り付けられた「グッとびくん・M2」端末(右上)

    洗車機の配電盤に取り付けられた「グッとびくん・M2」端末(右上の白いボックス)

NTTテレコンでは、今後、こうした遠隔で測定するIoTソリューション幅を広げていく方針で、最近では、熱中症対策として、熱さ指数(WBGT)を測定するソリューションを導入するケースが増えているという。

「先生方がわざわざグラウンドに行って温度を計測しなくても、職員室にいながら遠隔でグラウンドの暑さを測り、体育の授業をグラウンドで行うことを中止する判断もしやすくなります」(和田氏)

今シーズンは実証実験の第2フェーズ

オカモトは、オカモトセルフ音更OK店で大きなコスト削減効果を得られたことから、今シーズンは、導入店舗を10店舗増やしている。導入を検討している店舗は50以上あるが、場所によって気候が異なるため、まずは10店舗に導入し、サンプルデータを蓄積するという。

「いろいろな場所に店舗があり、気温が大きく下がらない店舗はどういう挙動をするのか、まず実験して傾向を知ろうという話になりました。北海道と秋田の店舗を比較すると傾向が全く違います。店舗によって、制御の仕方やしきい値の設定も変えないといけないので、今シーズンは実証実験の第2フェーズに位置付けています」(川上氏)

また、洗車機が止まると収支に影響が起こりやすい店舗かどうかや、常駐社員が何人いるかなども導入の判断材料になるという。

今後は顔認証や需要予測も

オカモトでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)として、顔認証で扉が開くといったサービス向上や、AIを活用した需要予測も検討している。ガソリンスタンドでは、1日に1回ないし2回、ガソリンを補充しないと足りなくなり、その予測が難しいため、需要予測によって、ガソリンを切らさないように取り組んでいくという。

「こうした、これまで職人技に頼っていたものをデジタルプロセスに変更して、可視化していく取り組みにチャレンジしていきたいと思います」と、川上氏は今後の展望について語っていた。