2023年第3四半期売上高トップ15に日本勢は1社ランクイン
半導体市場分析・コンサルティング会社の米Semiconductor Intelligence(SI)が、2023年第3四半期の半導体企業売上高トップ15を発表した。
それによると、同ランキング作成時点で確定値が発表されていなかったNVIDIA、Broadcom、Analog Devices(ADI)の3社については事前ガイダンスを基に算出した結果、トップは生成AIの需要拡大で絶好調のNVIDIAとなった。同社の2024会計年度第3四半期(8-10月)の売上高は事前ガイダンスの160億ドルを上回る181億ドルで、前四半期比34%増とトップ15社中でもっとも高い伸び率を示した点も注目されるべきだともしている(成長率は各社の本社所在地の現地通貨で計算)。
2位は回復の兆しを見せているIntel、3位はメモリ不況から回復の兆しを見せつつあるSamsung Electronics。以下トップ15社全社ともに前四半期比で売上高の増加を報告。SIでは、いくつかのデータから世界の半導体市場は好転しつつあるとの見方を示しており、2023年第1四半期をボトムとして回復してきているとする。
また、日本勢としては15位にルネサス エレクトロニクスがランクインしている。15社全体の前四半期比成長率は9%で、メモリメーカーのみで見ると同15%、非メモリメーカーのみでは同7%としている。
2023年第4四半期の売り上げ見通しは明暗分かれる予想
SIでは、2023年第4四半期の各社のガイダンスを基に同期間の成長率は前四半期比3%増と予測している。ガイダンスを発表している10社のうち、5社は前四半期比でプラス成長を、5社がマイナス成長を予想しており、プラス成長を見込む5社はPCならびにスマートフォン(スマホ)の回復がけん引役になると見ている。ちなみにNVIDIAはこのランキング作成時にはガイダンスを出していなかったが、決算時に同10.5%増とのガイダンスを出している(同社の会計年度としては2023年10月-2024年1月)。
一方のマイナス成長を見込むのはTexas Instruments(TI)、Infineon Technologies、STMicroelectronics、NXP Semiconductors、ルネサスの5社で、TIは全般的な環境が弱いとの予想。Infineonは、自動車部門以外のセグメントの低迷。STは産業分野の弱さを、NXPは通信インフラ部門の弱さをそれぞれ挙げている。ルネサスは在庫調整によるところとしている。
2024年はPCとスマホ需要の回復で半導体市場も回復へ
半導体市場は、前四半期比で2023年第1四半期はマイナス成長であったが、第2四半期ならびに第3四半期ともに同6%増、第4四半期も同3%増となることが見込まれており、SIは2024年の前年比2桁成長に向けた基盤が整ってきているとしている。
2024年の半導体市場をけん引するのは、PCとスマホ市場の回復で、市場調査会社である米IDCによると、PCの販売台数は2023年は前年比14%減も、2024年には同4%増に、スマホの販売台数も2023年は同5%減となるも、2024年は同4%増となると予測している。
こうした市場背景から、2024年に成長が期待できるのはメモリ企業ならびにPC/コンピューティングに重点を置く企業(NVIDIA、Intel、AMD)、スマホの重点を置く企業(Qualcomm、MediaTek)とSIでは予測しており、それ以外の車載や産業機器、IoTなどに重点を置く企業は成長が鈍化すると予想している。
2023年の半導体市場は9~12%減の予測も2024年は最大20%増の予測
世界の主要市場動向調査会社の2023年の半導体市場予測は、前年比9%減から12%減の範囲に集中しており、SIでも同9.5%減と予測している。また、各市場調査会社の2024年予測は、Future Horizonsの同9%増からIDCの同20%増までおおむね2桁成長を予測している。SIでも同16%増と比較的高めの予測をしており、2024年の成長率を決定づけるのはメモリの価格上昇がどの程度となるかで変わってくるとしている。
なおSIでは、2024年の半導体市場を明るい見通しとしつつも、世界経済は依然として新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその後遺症から回復途上にあるため、多くの企業は投資に慎重になっており、特に米国と中国という二大経済大国の間での政治的緊張の高まりに加え、ウクライナとイスラエル・ガザでの紛争といった不確実性が足かせになっているとする。ただし、全体の流れとして2024年以降、半導体市場は健全化に向かっていくものとSIでは予想している。