アイ・ティ・アール(ITR)は11月20日、2023年8月から9月にかけて国内企業を対象に実施したIT投資動向調査の結果を発表した。これによると、2024年度のIT予算は増額基調が継続し、AI関連製品・サービスへの投資意欲が加速するという。
同調査は同社が8月18日から9月1日にかけて実施したものであり、同社の顧客企業や主催セミナーへの出席者およびWeb調査の独自パネルメンバーなどのうち、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者に対して、Web経由で回答を呼びかけたもの。有効回答者数は2259人。
2023年度(2023年4月~2024年3月)のIT予算額が増額したと回答した企業の割合は44%で、2022年調査の2022年度(2022年4月~2023年3月)における増加との回答(41%)を上回った。 また、2023年度に減額した企業は2ポイント減の5%だった。
2024年度のIT予算額に増額を見込む企業は44%を占め、増額基調が継続すると同社は予想している。特に、売上規模500億円以上の企業では過半数が2023年度および2024年度共に増額としており、IT投資に旺盛な姿勢が見られる。
この増減傾向を指数化したIT投資インデックスを見ると、実績値は3年連続で上昇し、2023年度は前年調査時の予想値(3.32)を上回る3.69となり、同社の調査における過去最高値である2006年度の実績値(3.88)に迫った。また、2024年度の予想値は3.60と、2023年度とほぼ同水準の高いIT投資意欲が維持している。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する16項目のテーマへの取り組み状況を尋ねたところ、進行中・実施済みの企業は、「ワークスタイルの変革」と「業務の自動化」が共に4割を超えたが、これらを含め、ほとんどのDXテーマは前年度からほぼ横ばいとなった。
一方、「製品・サービスの付加価値向上」や「他社との共創、エコシステムの構築」といった「製品・サービスの競争力向上領域」のDXテーマでは、進行中・実施済みの企業、さらには成果が出ている企業が増加した。社内業務やシステムのDX推進に加え、ビジネス領域でのDXテーマに取り組む企業も増えてきたと同社は見ている。
企業ITに関わる代表的な製品・サービスを「インフラ/デバイス」「ミドルウェア」「業務系システム」「情報系システム」「セキュリティ」の5分野から全107項目を選出し、2024年度に新規で導入する可能性のある企業の割合を「2024年度新規導入可能性」、導入済み企業における2024年度の投資額の増減傾向を「投資増減指数」として算定し、動向を分析した。
その結果、2024年度の新規導入可能性は、前年調査で2位だった「AI(人工知能)/機械学習プラットフォーム」が1位に上昇し、2位には今回調査項目に加えた「生成AI」が位置し、AI関連の製品・サービスが上位2項目を占めた。
過去2年の調査で1位だった「電子契約/契約管理」は今回3位となり、バックオフィス業務のDXを担うサービスであり今回の新規項目でもある「電子請求書」がインボイス制度の影響もあって4位に続いた。
投資増減指数では、前年調査で2位の「5G(パブリック)」が1位に浮上し、2024年度に新規導入フェーズから投資拡大フェーズに移ると同社は見る。
「AI/機械学習プラットフォーム」と「生成AI」は、新規導入可能性に加え、投資増減指数でも5位以内に位置しており、未導入/導入済み企業共に2024年度に向けて投資意欲が高い分野となっている。
さらに、生成AIへの注目が影響したと同社が推察する、「音声認識」および「画像認識」が投資増減指数で上位10入りした。2024年度は、AI関連分野の製品・サービスへの投資が加速すると同社は予想している。