Hondaは11月17日、車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷軽減をサポートする全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360+(ホンダセンシング サンロクマルプラス)」を発表した。
Hondaは、道を使う誰もが事故に遭わない社会の実現を目指し、「Safety for Everyone」のスローガンのもと、ハード・ソフトの両面で安全技術の研究開発に取り組んできたという。その中で、2050年に全世界でのHondaの二輪車および四輪車が関与する交通事故の死者をゼロにするという目標を掲げており、現在の量産車で展開する安全運転支援システム「Honda SENSING」は、2014年の誕生以来、その機能を進化させながらグローバルでの適用を拡大し、さまざまなシーンにおけるドライブをサポートしてきたとする。
また最先端の安全運転支援技術においては、2021年に自動運転レベル3に適合するトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)をう際した「Honda SENSING Elite」を「LEGEND」に搭載して発売したほか、2022年にはそれらの技術開発で培われた知見を活用した「Honda SENSING 360」の展開を開始した。
中国で販売されたCR-Vから搭載を開始した同システムは、フロントと各コーナーに計5台のミリ波レーダを装備することで360度センシングを実現し、従来の運転では目視確認が難しかった車両周辺の死角をカバーすることで、他の車両や歩行者との衝突回避、および運転に伴うドライバーの運転負荷軽減に寄与することを特徴としているという。
今般発表されたHonda SENSING 360+は、従来システムの機能に加え、新たにドライバーモニタリングカメラと高精度地図を採用することで、ドライバーの状態確認や車両制御の機能が向上し、運転時の負荷を軽減させるとする。
Hondaは新システムの特徴的な機能として、主に以下の5つを挙げる。
- ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能
- レコメンド型車線変更支援機能
- カーブ路外逸脱早期警報
- 降車時車両接近警報
- ドライバー異常時対応システム
ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能
新システム搭載車では、高速道路や自動車専用道の走行中に、システムがアクセル・ブレーキ・ステアリングを操作し、ドライバーがハンドルから手を離しても(ハンズオフ)、車速や車線内走行を維持できるよう支援するという。
同機能では、高精度地図や全球測位衛星システム(GNSS)を活用し、自車の位置を特定。先行車がいない場合には、ハンズオフでも設定した車速を保ちながら車線中央を維持するように走行し、先行車が居る場合には適切な車間距離を保って追従するとのことだ。またカーブでは曲率を前もって読み取り、それに応じた加減速を行うことで安心して運転できるよう支援するとしている。
レコメンド型車線変更支援機能
前出の運転支援機能を使用して高速道路や自動車専用道を走行中に、自車より車速の遅い先行車を検知した場合、新システムでは一定の条件下において周囲の状況や追い越しが可能かどうかを判断。可能だと判断した場合には、ドライバーへの通知を行い手元のスイッチで承認されたときに限り、ウインカー操作や加減速、ステアリング操作などを行うことで追い越しや車線復帰を支援するという。
加えて、経路誘導モードでは、ナビの経路案内に基づいて目的地に向かうための車線変更を提案。ドライバーの承認が得られると、システムが自動的に分岐への進入、退出までの一連の車線変更を行うとする。
カーブ路外逸脱早期警報
新システム搭載車で高速道路や自動車専用道でカーブを走行する際、即座に減速しないと事故のリスクがあると判断した場合には、警告や減速支援を行うことでカーブ路外逸脱事故の発生を抑制するという。
具体的には、高速でカーブに侵入する際、メーターに「前方カーブ注意」と表示することでドライバーへの早期警告を実施。またカーブに近づき減速が求められるタイミングになると、警告音とヘッドアップディスプレイでの点滅表示により、ドライバーに減速を促す警告を行うとする。さらにカーブに近づいてなお即座に減速が必要となった場合には、より強く警告するとともにシステムによる減速を行うことで、カーブ路外逸脱事故の発生を抑制するとしている。
降車時車両接近警報
新システムは、駐停車中に後側方から接近する車両を検知した場合にも、フロントピラーやサイドミラー上のインジケータを点灯させることでその認知を支援するという。さらに、乗員が開けようとしたドアが側方通過車両と衝突する恐れがある場合には、インジケータの点滅と同時に警報音による注意喚起も行うとのことだ。
ドライバー異常時対応システム
新システムで搭載されたドライバーモニタリングシステムにより、走行中の体調急変などによってドライバーが運転を継続できなかった場合に、同一車線での減速・停車の支援が可能だという。
ドライバーがシステムからの操作要求に応じなかった場合に、段階的に警告音を強めていくことで、ドライバーが操作要求に応じるよう促すとのこと。それでも応じなかった場合、システムによってハザードランプとホーンで周囲に注意喚起をしながら、減速および停車の支援を行うとする。
さらに緊急通報サービスによってコールセンターへの接続も行うといい、ドライバーや同乗者をはじめ、周囲の交通参加者の安全を確保するとしている。
Hondaはこれらの機能により、健康起因やヒューマンエラーで発生する事故を抑制し、すべての人が心から安心して自由に移動できる事に加え、「積極的に出かけたい」「もっと遠くまで行きたい」と思えるような自動車の提供を目指すとする。
なおHonda SENSING 360+は、2024年に中国で「ACCORD」への適用を行うのを皮切りに、その後グローバルでの展開を予定しているとのこと。二輪車・四輪車を手掛ける同社ならではの強みを安全技術の研究開発に活かし、さらなる安全・安心を提供するべく機能進化を続けているとしている。