経済産業省(経産省)は11月14日(米国時間11月13日)、米国サンフランシスコ市内で、GX、DX、経済安全保障の確立に不可欠なAIや半導体分野における有力米国企業のトップと、日米連携の具体的なプロジェクトに関する今後の取り組みについて、意見交換会を開催し、日本からは経済産業大臣の西村康稔氏、経済産業政策局長の野原諭氏、Rapidus社長の小池淳義氏らが出席した。
経産省の資料によると、米国からはAMDのリサ・スーCEO、NVIDIAのジェンスン・フアンCEO、Supermicroのチャールズ・リアングCEO、Tenstorrentのジム・ケラーCEO、Western Digitalのデイビッド・ゲックラーCEO、Appleのデイビッド・トムVP、Microsoftのアントニー・クックCVPが出席した模様である。
出席した大企業の中に1社だけ2016年創業のスタートアップであるTenstorrentが入っていることが注目されるが、同社の現在のCEOであるジム・ケラー氏はこれまでAMDやIntel、AppleなどでCPUなどの設計に携わり、天才とも評される人物。Rapidusは顧客開拓が課題とされてきたが、Tenstorrentからの半導体製造受託を視野に協議したものとみられている。
意見交換の会合は非公開で行われたため、内容の詳細は不明だが、各社からはAIや次世代半導体に関する最新動向について説明があり、各社の今後の日米連携プロジェクトに関する前向きな取り組みに対する意思表明があった模様だという。例えばNVIDIAのフアンCEOは、「日本においても、AIなどの分野で高度な計算処理能力への需要が高まっていることを踏まえ、日本への供給量を確保していく」と述べたという。西村大臣は、こうした各社トップからの提案について、「しっかりと協力・支援することを検討し、日米連携の具体的なプロジェクトを強力にサポートしていく」と述べたという。
Rapidusがシリコンバレーに営業拠点を設置へ
今回の意見交換会では、Rapidusの小池淳義社長から、今年度内にもシリコンバレーに営業拠点を設ける方針も明らかにされた。将来の有望顧客である大手ファブレスやIT企業が集積する地域で、営業基盤の拡大に向けた足掛かりを作りたいという考えのようである。現在、同社は、ニューヨーク州アルバニーにあるIBMの半導体研究開発拠点に数十人規模の技術者を送り込んで、IBMの研究者とともに2nmプロセス技術の習得に向けた取り組みを加速させている。
経産省がシリコンバレーにJapan Innovation Campusを開所
今回の動きに合わせる形で経産省は11月12日(米国時間)、シリコンバレーに設置したスタートアップ支援拠点「Japan Innovation Campus」(カリフォルニア州パロアルト市)のオープニングセレモニーを開催し、西村経済産業大臣の他、現地のスタートアップ・エコシステムを中心とする関係者約70名が参加したとする。
日本にグローバルなスタートアップ・エコシステムを構築し、世界で勝てるスタートアップを創出するためには、海外のトップ・スタートアップエコシステムとのネットワークが重要であるという考えのもと、経産省では、世界で最も発達したスタートアップ・エコシステムの1つである米国・シリコンバレーにて、現地の産学官と連携して、海外展開を目指す日本のスタートアップを支援する拠点を設立したことになる。
同拠点では、現地のアクセラレーターやベンチャーキャピタルなどを含めた民間企業や、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校などといった世界トップクラスの大学・学術機関、JETROをはじめとする行政機関と連携し、日本のスタートアップの米国における資金調達や事業展開、日本の企業と米国のスタートアップ・VCとの連携を支援することにしている。すでに拠点内の個室の利用者(オフィスメンバー)として5社、コワーキングスペースの利用者(コワーキングメンバー)47社の利用者が決定しているという。
なお開所式にて西村大臣は、日本の起業家たちが海外に飛び出し世界を変えるイノベーションを実現してほしいとの思いを込めて「Go Global(世界に飛び出せ)」、 「Be Brave(勇気を出して挑戦せよ)」とのメッセージを送り激励したと自身のX(旧Twitter)にポストしている。
日本政府は2022年にスタートアップへの投資額を2027年度には10倍超の10兆円規模に拡大する目標を掲げており、投資先となるスタートアップや起業家の育成のため、経産省は2023年度からの5年間で1000人の起業家を海外に派遣するとしている。同拠点はその受け皿の1つとなるという。
2023年11月20日訂正:記事初出時、小池淳義氏の氏名を小池敦義氏と誤って記載しておりましたため、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。