データ管理ソリューションを手掛ける米Cohesity(コヒシティ)の日本法人であるコヒシティ ジャパンは11月16日、AI(人工知能)でデータから洞察を引き出すためのソリューション「Cohesity Turing (コヒシティ チューリング)」(特許出願中)が、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が提供する生成AIサービス「Amazon Bedrock(ベンダーロック)」と統合すると発表した。

「Cohesity Turing」と「AWS Bedrock」が連携

Cohesity Turingは、データセキュリティとデータ管理にAIの力をもたらすサービスとして23年5月に発表された。ユーザー企業が管理するデータと責任あるAIを掛け合わせ、セキュリティ関連で何か異常値を発見したり、対話型で具体的な質問に対する答えを得たりといったさまざまな使い方ができるとしている。

  • 「Cohesity Turing」サービス概要

    「Cohesity Turing」サービス概要

すでに米マイクロソフトが提供する「Azure(アジュール)」と、米グーグルが提供する「Vertex(バーテックス)AI」の2つのAIプラットフォームには対応していたが、今回、ユーザー企業の選択肢を増やすため、Amazon Bedrockとの統合に踏み切ったとしている。

Amazon Bedrockは、生成AIアプリケーションの構築と拡張のために、主要AI企業の基盤モデルにAPI経由でアクセスできるようにするフルマネージドサービス。Cohesity Turingとの統合により、ユーザー企業は最新のAI機能にアクセスして活用し、データから深い情報に基づいた洞察を得ることができるようになる。

  • 「Cohesity Turing」と「AWS Bedrock」が連携

    「Cohesity Turing」と「AWS Bedrock」が連携

例えば、直感的な自然言語による会話で自身のデータを問い合わせ、過去のデータからセキュアな洞察を生成できるようになる。16日の製品発表会でコヒシティ ジャパン 技術本部 本部長の笹岳二氏は、「データセキュリティに直接つながることではないが、AIを活用してデータから有益な洞察を引き出し、データセキュリティ対策につなげることができる」と説明した。

  • コヒシティ ジャパン 技術本部 本部長の笹岳二氏(16日、オンライン)

    コヒシティ ジャパン 技術本部 本部長の笹岳二氏(16日、オンライン)

笹氏は、生成AIを用いたデータ解析の例として、情報漏えいを経験した医療機関を想定したデモを披露した。Cohesity Turingに「過去120日間に社外に公開された可能性のある患者名とその治療計画が、社内システムに存在することを確認できますか」と聞いてみると、AIは可能性のある3名の患者を過去のデータからピックアップした。

  • Cohesity Turingデモ画面

    Cohesity Turingデモ画面

  • Cohesity Turingデモ画面

    Cohesity Turingデモ画面

さらに、「2番目の患者の外部のアドレスと添付書類はありますか」と追加で聞くと、対象の患者の連絡先と医療情報を引っ張ってきてくれた。

  • Cohesity Turingデモ画面

    Cohesity Turingデモ画面

  • Cohesity Turingデモ画面

    Cohesity Turingデモ画面

「AIを活用することでデータからより多くの価値を引き出せ、直接的な利益を得ることができる」(笹氏)

同社は現在、Cohesity Turingのアーリーアクセス プログラムを提供している。同プログラムの終了後、6カ月以内に本格的な提供開始を予定している。

Microsoft 365のデータセキュリティとバックアップを強化

またコヒシティ ジャパンは11月16日、マイクロソフトとの協業を拡大し、「Microsoft 365」のデータセキュリティとバックアップ保護機能を強化すると発表した。

コヒシティとマイクロソフトは、長年にわたり、高速バックアップとリカバリ実現のためのソリューションを提供してきた。Microsoft Azureから Microsoft 365まで、同社の製品環境全体にわたるAIとクラウドセキュリティの統合を図ってきた。

  • Microsoft 365 データ保護ソリューション概念図

    Microsoft 365 データ保護ソリューション概念図

そして、今回の協業拡大により、マイクロソフトが提供するバックアップストレージ「Microsoft 365 Backup Storage」のネイティブAPIと「Cohesity DataProtect」が統合する。

Cohesity DataProtectはサイバー脅威からデータを保護し、かつセキュアなバックアップとリカバリを提供するソリューション。この統合によりクラウドネイティブ、SaaS、従来のデータソースに対して、ポリシーベースの包括的な保護が提供できるようになるという。

ユーザー企業はコヒシティが提供するインフラストラクチャをMicrosoft 365 Backup Storageにシームレスに接続することで、オンプレミス環境とクラウド環境におけるデータ保護、復旧、ストレージをシンプルにすることができ、常にデータがアクセス可能になる。 また、両サービスのコンプライアンス機能を組み合わせることで、企業はデータガバナンス規制に準拠し続けることも可能だとしている。

マイクロソフトはデータ保護と管理はユーザー企業の責任だと定義している。Microsoft 365のサービスごとに操作は異なり、マイクロソフトもバックアップを行うことを推奨しているという。

「SharePoint(シェアポイント)」と「OneDrive(ワンドライブ)」のデータ保護を例に挙げよう。これらのデータは削除されると第一段階のごみ箱に移動し93日間保存される。そして、第一段階のごみ箱から削除されたデータは、第二段階のごみ箱に送られるが、同じく93日間しか保存されない。逆に言えば、データは一度削除されてしまうと、約半年でなくなってしまう。

  • SharePointとOneDrive データ保護

    SharePointとOneDrive データ保護

「Microsoft 365のサービスは真のバックアップサービスは提供していない。 コヒシティは、オンプレミス、クラウドネイティブ、SaaSのワークロードのバックアップとリカバリをサポートし、これらはすべて単一のコントロールプレーンで管理することができる」(笹氏)