ヴイエムウェアは11月14日・15日と2日間にわたり、ザ・プリンス パークタワー東京で、年次イベント「VMware Explore 2023 Tokyo」を開催した。初日のGeneral Sessionのテーマは「AIの力を活用するためのVMwareクラウドスマート戦略」。
本稿では、VMware CEOのラグー・ラグラム氏やブロードコムCEOのホック・タン氏によるGeneral Sessionの講演から、同社の戦略やソリューションの最新情報をお届けする。
ブロードコムCEOが買収後の指針を説明
ブロードコムは10月18日、10月30日にVMwareの買収を完了する予定というリリースを出したが、本稿執筆時点で、完了の発表は行われていない。CAテクノロジーズ、シマンテックとソフトウェアベンダーを次々と買収してきたブロードコムが買収したヴイエムウェアをどのように統合していくのか、注目を集めている。
そうした中、ブロードコムのCEOであるタン氏が「VMware Explore 2023 Tokyo」のGeneral Sessionに登壇した。同氏は、「VMwareの次の章が始まったが、楽しみにしている。両社が統合することで価値を届ける。長い旅路だったが、もう少しで完結する」と述べ、買収が時期に完了することを示唆した。
タン氏は、VMwareの買収について、「3つの約束をする」と語った。1つ目は「イノベーション」を加速し、研究開発を増やすという。2つ目は「エコシステム」をさらに強化して、パートナーを通じて顧客を支援する。3つ目は「運用」として、顧客が簡単に導入して使えるVMwareのソリューションを提供する。
ラグラム氏は、General Sessionの後に行われたブリーフィングで、タン氏が登壇した背景について、「日本の顧客が買収について関心が高く、タンCEOの口から投資などの方向性について直接聞きたいとの声がある」と語っていた。
マルチクラウドにおける最新の取り組み
続いて、ラグラム氏が、VMwareの注力テーマはマルチクラウドとAIだとして、マルチクラウドについて、次のように語った。
「われわれはクラウドスマートというアプローチを提唱してきた。このアプローチは、正しいアプリを適正なクラウドに乗せることを目指している。われわれはマルチクラウドを加速する支援をしてきたが、顧客の成功につながっている」
マルチクラウドについては、VMware モダン アプリケーション/マネジメント ビジネス グループ 上級副社長兼ゼネラルマネージャのプルニマ・パドマナバン氏が説明した。
パドマナバン氏は、「クラウドインフラのモダナイゼーション」「アプリケーションデリバリーの高速化」「自律型ワークスペースの提供」「Software-Defined Edgeの活用」という4つの視点で、マルチクラウドについて説明した。
クラウドインフラのモダナイゼーション
クラウドインフラのモダナイゼーションの実現に向けてカギとなるソリューションがマルチクラウドプラットフォーム「VMware Cloud Foundation(VCF)」だ。パドマナバン氏によると、VCFは前年比31%の成長を見せているという。
11月7日に発表された最新版のVCF 5.1の特徴として、 GPU容量が2倍になったことが紹介された。これにより、生成AIおよびLLMのワークロードサポートを強化する。
また、パドマナバン氏は、vSAN Maxにより、ペタバイト規模のストレージを分離型にして一元管理できること、ソブリンクラウドのパートナーが57社と前年比に対して倍増していることを紹介した。
パドマナバン氏はVCFが提供しているサービスのうち、セキュリティについて言及した。
アプリケーションデリバリーの高速化
パドマナバン氏は「アプリケーションを最適化してクラウドでも運用できるようにしなければならないが難しい」と述べ、それを実現するソリューションとして「VMware Tanzu Application Platform」を紹介した。アプリケーションの最適化とは、コスト、パフォーマンス、セキュリティを最適化することを意味する。
「VMware Tanzu Application Platformは」関しては、今年8月に発表された「VMware Tanzu Application Engine(ベータ)」が紹介された。同製品は、アプリケーション指向の抽象化レイヤーを導入し、クラウド内およびクラウド間で一貫した運用ガバナンスとコンプライアンスでアプリケーションを実行できるようにデザインされている。パドマナバン氏は、Tanzu Application Engineについて、「デベロッパーのために自動化してくれる」と述べた。
アプリケーションの運用と最適化を支援するソリューションとしては、「VMware Tanzu Intelligence Services」が紹介された。同ソリューションにはVMware Ariaポートフォリオの一部と共通のデータ プラットフォームが組み込まれており、プラットフォーム エンジニアリングとクラウド運用を強化する。
自律型ワークスペースの提供
自律型ワークスペースを提供するソリューションは「VMware Anywhere Workspace」だ。同ソリューションは、仮想アプリケーションとデスクトップ、エンドポイント管理とセキュリティ、従業員のデジタル管理から構成される。
パドマナバン氏は、Anywhere Workspaceに関する注目すべき点として、「Apps on Demand」「DEXインサイトの強化」を挙げた。
「Apps on Demand」は、インストーラーを使用せずに、必要に応じてユーザーに仮想アプリケーションを配信する方法。VMware社内では、Apps on Demandにより、アプリケーションのターンアラウンド時間を72時間から1時間に短縮できたという。
Software-Defined Edgeの活用
ヴイエムウェアは、エッジプラットフォームとして、「VMware Edge Compute Stack」を提供している。
パドマナバン氏は、Edge Compute Stackについて、「エッジではインフラのサイズが問題になる。Edge Compute Stackは適正なサイズのインフラを提供する」と説明した。
8月に開催された年次イベント「VMware Explore 2023」では、「VMware Edge Cloud Orchestrator」が発表された。同ソリューションは、VMware SASEとVMware Edge Compute Stackを統合管理し、エッジネットワークとエッジコンピューティングのギャップを解消する。
Edge Cloud Orchestratorにより、セキュリティと管理アップデートはワークロードにより「プル」で実行される。パドマナバン氏は、「エッジのもう一つの問題はエンドポイントのアップデート。ブールベースのメカニズムでアップデートを行う」と説明した。
AIに関する取り組みについては、個別取材の内容と共に別途お伝えする。