imecは11月14日(欧州時間)、11月14日~17日の期間に独ミュンヘンで開催される「SEMICON Europe」に併せて開催される「imec Technology Forum(ITF) towards NETZERO」を踏まえ、IC製造が環境に与える影響に関するバーチャルファブ(ネット上の仮想的な半導体工場)の定量的データベースである「imec.netzero」の無料アクセス版を公開した。
imecでは、この取り組みを通して半導体サプライチェーンの壁を超えて、半導体製造の環境への影響を軽減するための支援を目指しており、政策立案者や学者、技術者たちの環境負荷低減に向けた有益な情報源になることを期待するとしている。
半導体の製造は、高いエネルギー消費、希少な材料の使用、温室効果ガスの排出など、多様な環境への影響を持つ複雑なプロセスの絡み合いである。そのため半導体産業全体として、気候変動に関するパリ協定の目標を考慮しながらプロセスフローの最適化を目指している。しかし、環境に高い影響を持つプロセスや技術を特定し、その軽減を図るためには膨大なデータが必要となる。
そのための取り組みとしてimecは、協賛者を募って「Sustainable Semiconductor Technologies and Systems(SSTS)」という研究プログラムを実行している。同プログラムは、エンドユーザーからファブ、ファウンドリ、材料、および装置メーカーに至るまで、産業全体を包括した半導体エコシステムに関与する枠組みで、アカデミアや政府と協力して進められてきた。
IC製造の環境影響を正確に定量化することを目的としたバーチャルファブのデータはimecの研究ファブの実稼働データで、同プログラムに出資者する装置、材料、およびファブパートナー(仏Air Liquide、米Applied Materials(AMAT)、蘭ASM、蘭ASML、英Edwards、米Lam Research、栗田工業、SCREEN、東京エレクトロン(TEL)、米GlobalFoundries(GF)、韓Samsung Electronics、台TSMCなど)が提供するデータなどとの比較・評価が継続的に行われている。
具体的には、バーチャルファブではライフサイクルアセスメントの手法に従い、IC製造の各プロセスステップで使用されるエネルギー、材料、化学物質、ガス、およびその他のリソースに関するデータを収集・分析。パートナー各社は、imec.netzeroのプライベートWebアプリにアクセスする形で、現在および将来のIC技術に関する具体的な動向、プロセスによる排出量や他の環境への影響を定量化する詳細な情報などを入手できるという。
一方の無料公開バージョンはパートナーのみならず、より広範な半導体業界関係者にデータを活用してもらうことを目的に、プライベート版と同じ工場モデルとプロセスデータベースへのアクセスを限定的ながら提供しようという取り組みで、imecのプログラムマネージャーであるCédric Rolin氏は「目標は半導体サプライチェーンやSSTSのプログラムを超えて、IC製造の環境影響に関する透明かつ高品質なデータを提供すること。製品デザイナー、環境研究者、および産業からの影響のデータを求める政策立案者などに価値ある情報を提供できるようになる」と今回の取り組みの意義を述べている。