大林組とトップライズは11月13日、トンネル坑内の非GNSS環境下において、作業中の人や重機などの動的障害物を回避しながら自律飛行を行うドローンを開発し、実証試験に成功したことを共同で発表した。

  • 今回の実証試験で使用された自律飛行ドローン

    今回の実証試験で使用された自律飛行ドローン(出所:大林組)

トンネルの掘削工事では、作業が計画通りに進んでいるかの確認を切羽直下で目視により行うが、切羽付近は崩落のリスクがあるため、作業員が危険区域に立ち入ることなく確認できるよう、スキャナなどを用いた遠隔計測技術の開発が進んでいる。しかしそうした地上型スキャナは、トンネル坑内の状況によって切羽付近まで進入できない場合があり、計測精度が低下する。またドローンにスキャナを搭載する方法も試みられているが、飛行ルート上に人や重機が入れないため、目視での確認よりも長い時間を要することが課題だった。

そこで両社は今回、米・カーネギーメロン大学 機械工学科の嶋田憲司教授が主宰する「計算工学・ロボティクス研究室(CERLAB)」の協力を得て、全地球を対象とした衛星測位システムであるGNSSを用いない環境において、動的障害物を回避しながら自律飛行するドローンの開発を行ったとのこと。同ドローンは、トンネル坑内で作業中の人や重機を回避しながら掘削形状を計測する上、計測結果と設計値を比較して、掘削不足箇所を重機オペレータに指示するという。

なお大林組は、実際のトンネル坑内で自律飛行ドローンの実証試験を行った結果、人や重機が動いている環境でも、切羽直前まで近づき迅速かつ十分な精度で計測を行えることを確認したとしている。

今回開発された自律飛行ドローンには、撮影した対象物の距離と色を認識するセンサ付きカメラが搭載され、センサで検知した物体を独自アルゴリズムによって処理することで、動的障害物かどうかを判断するという。またカメラから取得した情報は、ドローンに搭載されたコンピュータ上で処理が行われ、リアルタイムでトンネル坑内の3次元地図を生成するとのこと。これにより、非GNSS環境下であっても自律飛行が可能となり、障害物を回避しつつ目的地への最適飛行ルートを自動生成することができるとする。

  • 実証試験でのドローンのルート作成状況

    実証試験でのドローンのルート作成状況(出所:大林組)

加えて、従来は作業員が切羽直下からの目視で確認し、レーザーポインタを用いて重機オペレータへと指示を行っていた掘削不足箇所について、今回のドローンでは、撮影したカメラ画像のSfM解析(複数の写真から3次元形状を復元し、3次元点群を取得する技術)を行って掘削形状を計測。そしてその結果をもとに、設計値と実際の掘削形状を比較・可視化して、オペレータに不足箇所を指示するという。

これにより、切羽付近への作業員の立ち入りが不要になるとともに、重機オペレータは画面上で掘削箇所と形状を確認しながら作業ができるため、安全性・生産性・施工精度など面でメリットがあるとのことだ。

  • 掘削不足箇所表示の例

    ドローンでの計測結果をもとにした掘削不足箇所表示の例(出所:大林組)

大林組とトップライズによると、2023年度中にはカーネギーメロン大からプログラミングや操作の技術移転を受ける予定だといい、今後はさまざまな状況下での実証実験を重ねながら、トンネル工事の安全性と生産性の向上のため、自律飛行ドローンの実用化を目指すとする。

さらに両社は、今回開発した動的障害物を回避しながら自動的に飛行ルートを生成する機能は、トンネル掘削以外の場面でも広く活用が見込めることから、他工種や建設業以外での活用も視野に入れて開発を進めるとしている。