2022年のSiCウェハに占める中国産の割合は全世界の5%ほどであったが、近年、中国勢が一斉に増産に乗り出しており、生産体制の整う2024年以降、世界シェアの50%以上が中国産となる可能性がでてきたと台湾メディアのDigiTimes Asiaが報じている

中国にはSiCの結晶成長に携わる有力企業が4~5社ほどあり、現在、各社の月産能力は合計で約6万枚ほどだが、各社の積極的な増産により、2024年には月産能力が12万枚、年間生産能力は150万枚に達すると推定されるという。

2023年におけるSiCウェハの世界供給量が推定約170万枚であることと踏まえると、2024年の中国勢による供給量は世界市場シェアの約半分を占める可能性があるとDigitimes Asiaは指摘している。

さまざまな業界筋や市場調査機関の調査によると、2022年の中SICCおよび中TankeBlueの合算市場シェアは約5%ほどであったという。

現状、世界の大手4社(Wolfspeedが60%、Coherentが15%、ロームの子会社SiCrystalが13%、 SK Siltronが5%)が市場の大半を握っており、そうしたこともあり、多くの市場調査機関が中国メーカーの生産能力、実際の生産量、品質に懐疑的であったが、SiCウェハを少しでも多く調達したいという思惑を持つRobert Bisch、Infineon Technologies、STMicroelectronicsなどの大手パワー半導体企業がSICC、TankeBlue、San'anといった中国勢とも供給契約を締結し、合弁会社の設立などを行っている。これは間接的に、SiC材料のサプライチェーンにおける中国の関与が急速に拡大していることを示すものだと考えられる。

現在のSiCウェハ市場は150mmウェハが主流であり、需要の伸びに供給が追い付かないことが懸念されている。しかし、中国メーカーの急速な生産能力拡大に伴い、2024年までに業界は大きな転換を遂げる可能性が指摘されており、その結果、SiCパワー半導体はこれまでのような深刻な不足が解消され、中国メーカー各社の生産能力が拡大するにつれて、価格も引き下げられる可能性がでてくるという。このような状況は、競争力の低いメーカー、特に歩留まりが悪く、生産コストが市場の平均的な価格設定に追随していけないメーカーに対して影響を及ぼす可能性がある。

こうした競争環境の変化を見越して、欧米のSiC材料メーカーの多くが生き残りをかけて、2023年後半の資金調達活動を加速させているとDigitimes Asiaでは分析。また、SiC市場の過熱をおさえるため、中国政府も2023年の新規参入企業の承認プロセスを複雑化するといった動きも見せているという。