ソフトバンクグループ(SBG)が11月9日に発表した2023年4~9月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が1兆4087億円(前年同期は1290億円の赤字)の赤字だった。同期間の赤字は2年連続となる。AI(人工知能)関連の新興企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)事業の投資損失などが響いた。

傘下の英半導体設計大手アームが9月に米ナスダック市場に上場したことで、SBGは7451億円のキャシュと6744億円の資本剰余金を手にしたが、子会社への投資利益は連結決算では消去されるため、その影響は限定的となった。

一方で、アームの業績は好調だ。2023年1~6月のアームベースチップ出荷数は約139億個で、23年6月までの累計は2700億個を超えた。同社が8日(現地時間)に発表した23年7~9月期決算は、売上高が前年同期比28%増の8億600万ドル(約1200億円)だった。上場に伴う一時的な株式報酬費用を計上し、最終損益は1億1000万ドルの赤字(前年同期は1億1400万ドルの黒字)だった。

9日に開かれたSBGの決算会見で後藤芳光CFO(最高財務責任者)は「アームの業績は非常に順調で、期待通りの結果を出してくれている」とアピールした。

  • ソフトバンクグループ CFO 後藤芳光氏(9日)

    ソフトバンクグループ CFO 後藤芳光氏(9日)

同社が最も重視する指標である保有資産価値から純有利子負債を差し引いたNAV(時価純資産)は、9月末で16.4兆円と6月末の15.5兆円から増えた。

また、手元流動性は5.1兆円と高水準を維持しており32年度までの社債償還分(約6兆円)の大半を確保しており、保有株式に対する純有利子負債の割合を示す負債カバー率(LTV)は10.6%と「投資会社として活動が足りないくらい安全なレベルを維持している」(後藤氏)という。

  • SBGが重要視する3つの指標「NAV(時価純資産)」「負債カバー率(LTV)」「手元流動性」

    SBGが重要視する3つの指標「NAV(時価純資産)」「負債カバー率(LTV)」「手元流動性」

「これから投資モードに突入していく。AI革命をけん引する」ーー。後藤氏はそう断言し、22年度からほぼ凍結していた投資を徐々に加速していく方針を明らかにした。23年7~9月期の投資額は15億ドルと前年同期の3倍に増えた。

  • 投資額の推移

    投資額の推移

会見ではAIを搭載した自動運転技術を展開する米スタックAVや、用途に合わせたカスタム地図アプリを提供する米マップボックスといった新興AI企業の魅力を紹介し、「優良案件発掘に注力していく」と語った。

またAI投資戦略において、SVFを通じた投資だけではなく、SBGの自己勘定投資も積極的に行っていく。SVFからの投資は少額投資で緩やかな連携にとどまる場合が多く、投資期間も最長14年に限られる。しかし、SBGによる投資なら長期での価値創造が可能で「テーマ性のある集中投資ができる」(後藤氏)としている。7~9月期はSBGの自己勘定投資が全体の7割を占めた。

また同氏は会見で、傘下でシェアオフィス事業を手がける米ウィーワークの経営破綻について「非常に残念。大変大きな宿題をもらった」と言及した。「投資の意思決定にどういう過ちがあったのか、改善していくのかということを考えていく良いきっかけをもらえた」とコメントした。