楽天グループ(楽天G)が11月9日に発表した2023年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が2084億円(前年同期は2625億円の赤字)の赤字だった。携帯電話事業の赤字が主な原因であり、同期間の赤字は5年連続となった。一方で、ネット通販や金融事業は好調で、売上高にあたる売上収益は前年同期比10%増の1兆4912億円と、同期間で過去最高を更新した。
携帯電話事業の営業赤字は2662億円(前年同期は3714億円の赤字)と赤字幅は縮小しているが、厳しい状況であることに変わりはない。その一方で契約数は10月末時点で542万件を超え、10月の純増数は約19万人だった。9日に開かれた決算会見で楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は「24年末までに800~1000万件の契約数を目指す」と表明した。
同社は10月に「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯(700MHz帯)を獲得した。建物内でもつながりやすいのが特徴で、かねてより課題だった通信品質を高めて契約増につなげる狙いがある。今後10年間で544億円を投じ、全国で1万局超の基地局を整備する方針。まずは、既存の1.7GHz帯およびローミングだけでは対処しきれない残りのカバレッジホール(屋内など)の補完を優先していく考えだ。
同社はこれまで携帯事業の基地局整備などに累計1兆円超を投じてきた。その大半は社債で賄われ、24年からの8000億円規模の社債償還が迫っている。24年に約3600億円、25年には約4700億円の償還が始まる。
設備投資の大幅削減と同時に、償還分の資金調達を急ぐ。4月には傘下の楽天銀行を上場させ717億円を調達。そして、公募増資と三木谷氏の資産管理会社などへの第三者割当増資で約3000億円を調達した。
また同会見で三木谷氏は楽天証券株の一部をみずほフィナンシャルグループ(FG)に売却することを明らかにした。みずほFGは傘下のみずほ証券を通じて約870億円を出資し、出資比率を現在の20%から49%まで引き上げる。みずほ証券は2022年に約800億円を投じて楽天証券株の20%を取得し持ち分法適用会社としていた。
これらすべてを合計すると、楽天Gは23年には5400億円規模の資金を調達できる見込み。三木谷氏は「無駄なものは他社と協力して投資を減らしキャッシュフローを改善していく。問題はない」と述べた。
ネット証券最大手のSBI証券は8月末に、日本株売買手数料を無料化する戦略「ゼロ革命」を打ち出した。2024年1月からはじまる新NISAでの米国株式&海外ETF売買手数料もゼロ化する。楽天証券はすぐに追随したが、手数料収入減少による収益力低下懸念が上場計画に影響を与える可能性がある。
「楽天証券ホールディングスは引き続き上場方針を維持し、然るべきタイミングで上場再申請を目指す」(三木谷氏)