半導体リバースエンジニアリング会社の加TechInsightsによると、中国のNANDフラッシュメモリメーカーYMTC(長江存儲科技)が製造した232層QLC 3D NANDフラッシュメモリが中国企業が2023年7月に発売したPC向けSSD「ZhiTai Ti600」(1TB品)に搭載されているのを確認したという。
それによると、このQLCタイプの3D NANDダイは、19.8Gb/mm2という市販のNAND製品の中でも最高クラスのビット密度を備えていることが確認されたという。また、以下のような特徴も確認されたとしている。
- YMTCは3D NAND TLCおよびQLCアプリケーション向けに開発したXtacking Hybrid Bondingテクノロジーを採用。最新世代とされるXtacking 3.0は232層の構造形成に採用されており、その中の技術の1つであるBSSC(Backside Source Contact)技術などを活用することで、歩留まりと性能の向上、コスト削減を実現した模様である。
- YMTCは、AppleのiPhoneへの部品供給が制限されるなど、米国政府の定めるエンティティリストへの掲載に伴う制裁の影響を受けつつも、継続して先端技術の開発を行っている。
- 最近のメモリ市場の低迷を受け、多くのメモリメーカーがコスト削減策(減産)に重点をシフトさせたことが、逆にYMTCの高ビット密度3D NANDを市場流通させる機会となった可能性がある。
- YMTCが先行したことで、同じように232層QLC 3D NANDの開発をしているMicron TechnologyならびにSolidigm(旧Intel、現在はSK hynix子会社)のシェアを奪う可能性がある。また、NAND最大手のSamsung Electronicsは現在、300層以上を可能とする第9世代V-NAND(V9)によるTLCとQLCの実現に焦点を当てているため、236層の第8世代(V8)でのQLC開発は進めていない。このほか同社は、モバイル市場向けに176層の第7世代(V7)を用いた512GB UFS 3.1製品を発表している。Samsungと並び300層以上の実現を進めるSK hynixはQLCではなくTLCに注力している。
- すでに判明しているSMICの7nmプロセスを採用したHuawei Mate 60 Pro搭載のSoCであるHiSilicon Kirin 9000シリーズに見られた技術革新と同様、中国が米国の対中半導体規制の中にあっても、独自の国内半導体サプライチェーンを構築するという意気込みが他国の同様の取り組みと比べても成功している可能性が高まっている。