ソフトバンクが11月8日に発表した2023年4~9月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比29%増の3021億円だった。前年同期に保有していた投資有価証券の評価損や訴訟に係る遅延損害金を計上したことや、子会社のZホールディングスが保有する韓国Webtoon Entertainmentに対する持分比率が変動したことに伴い発生した持分変動利益を計上したことによる影響を受け増益した。

売上高は前年同期比5%増の2兆93382億円だった。ファイナンス事業が2022年10月に子会社化したPayPayの影響などにより717億円、ディストリビューション事業がICT(情報通信技術)関連の商材およびサブスクリプションサービスの堅調な増加などにより263億円、メディア・EC事業がアカウント広告や検索広告の売上の増加などにより179億円、エンタープライズ事業がデジタル化に伴うソリューション需要の増加などにより168億円、それぞれ増収した。

一方で、コンシューマ事業は、スマートフォンの販売単価の増加により物販の売上が増加したものの、電力市場での取引が減少したことによるでんき売上の減少およびモバイル売上の減少などにより、52億円の減収となった。

営業利益は6%増の5144億円だった。これは、PayPayの子会社化などによりファイナンス事業が69億円、通信料の値下げの影響などによりコンシューマ事業が61億円、それぞれ減益となった一方、販売促進費の減少およびLINEが営むAI(人工知能)カンパニー事業をワークスモバイルジャパンに承継したことに係る事業譲渡益の計上などによりメディア・EC事業が238億円、エンタープライズ事業が107億円、ディストリビューション事業が12億円、それぞれ増益となったことによるものとしている。

2024年3月期通期の連結業績に関しては、売上高、営業利益、純利益それぞれ前年同比増2%増の6兆円、26%減の7800億円、21%減の4200億円と従来予想から据え置いた。

ソフトバンクは2023年5月、長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指すと発表した。AIの加速度的な進化により急増すると予見されるデータ処理や電力の需要に対応できる構造を持ったインフラを構築することを目指すとのこと。

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また、同社は生成AI開発向けの計算基盤を構築するため、米エヌビディアと協業し「分散型AIデータセンター」の構築を進めている。総額200億円を投じてGPUクラウドサービスを24年3月までに構築する計画だ。2024年内に3500億パラメーターの国産LLMの構築を目指す考えだ。

さらに11月2日、ソフトバンクの新型株「社債型種類株」が東証プライム市場に上場した。議決権と普通株式への転換権がない同種類株は、議決権の希薄化が生じない「社債」と自己資本が拡充する「株式」の両面の顔を持つ。第1回の発行総額は1200億円で、少額投資非課税制度(NISA)の対象となり個人投資家を増やすことも同社の狙いの一つだ。調達した資金は通信・IT技術の高度化や次世代社会インフラに関連した成長投資に充てる。

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