三菱電機は、冷暖房用ヒートポンプ式空調機向けに高い伝熱性能を実現した「鉛直アルミ扁平管熱交換器(VFT熱交換器)」を開発したことを発表した。

  • 開発されたVFT熱交換器の概要図

    開発されたVFT熱交換器熱交換器の概要図(出所:三菱電機)

近年、カーボンニュートラル社会実現に向け、化石燃料を燃やさずに空気中にある熱エネルギーを使用するヒートポンプ式空調機の需要が拡大している。

しかし、ヒートポンプ式空調機には地球温暖化係数の高いフロン冷媒が使用されており環境負荷が高いという側面があり、環境負荷を下げるために冷媒量を削減すると今度は伝熱性能が低下してしまう課題があったという。

この冷媒量の削減と伝熱性能の向上という2つの要求を両立させるためには、熱交換器内に冷媒を流す扁平管を細径かつ高密度に多数配置することで冷媒と空気が触れる面積を拡大すること、ならびに熱交換器内の容積を削減することが有効だとされている。

一方で、従来の水平アルミ扁平管熱交換器(HFT熱交換器)は、冷媒分配器内部を下から上に向かって冷媒が流れ、冷媒分配器から水平方向に複数配置されたアルミ扁平管に冷媒が分流する構造であり、アルミ扁平管の数が増えると重力の影響を受けてしまい、ガスと液が混ざり合う冷媒をすべての扁平管内に均等に行き渡らせることが難しく、伝熱性能を向上させにくいという課題があったという。

そこで同社は今回、冷媒分配器内部のガスと液の冷媒の流れをシミュレーション技術や高速度カメラで可視化することで、ガスと液の冷媒を複数の小穴から噴出させ、均等に混合する二重管構造の新しい冷媒分配器を開発。

  • 高性能冷媒分配器の概要図

    高性能冷媒分配器の概要図(出所:三菱電機)

また、冷媒分配器内部を水平方向に冷媒が流れ、冷媒分配器から鉛直上向きに多数配置されたアルミ扁平管へ冷媒が分流する構造も新たに開発し、重力の影響を受けることなく冷媒を均等に行き渡らせることを可能にしたという。

  • HFT熱交換器とVFT熱交換器の比較

    HFT熱交換器とVFT熱交換器の比較(出所:三菱電機)

これらを組み合わせることで、従来のHFT熱交換器1ユニットあたりと比べて約4倍となる100本以上のアルミ扁平管を高密度に実装しながら、ガスと液の冷媒を均等に行き渡らせることが可能となり、従来のHFT熱交換器と比較して伝熱性能が最大で約40%向上したほか、熱交換器の内容積を最大で約20%削減することができ、熱交換器内部の冷媒量の削減も実現できたとする。

このほか、暖房中の除霜運転時に霜が溶けた水が熱交換器から排出されずフィン上で凍結することで、熱交換器の通気を妨げて空調機能が低下してしまうという課題に対しては、独自の排水解析技術を活用することで水の流れを可視化。排水スリットや切り起こし構造をフィン上に設けて排水性を向上させた新構造の高排水フィンを開発し、VFT熱交換器の冷暖房用ヒートポンプ式空調機へ適用することにも成功したという。

なお三菱電機では、今後も有している技術力を製品へ適用していくことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献したいとしている。