onsemiは11月7日、都内で記者説明会を行い、同社CEOであるHassane El-Khoury氏とSimon Keeton氏(EVP&GM、Power Solution Group)が同社のビジネス動向について説明を行った(Photo01)。

同社は昨年にも同様の説明会を行っているが、この際はまだオンラインでのイベントだった。今回はEl-Khoury氏ら経営陣が丁度日本を訪問する用事があったようで、これに合わせての開催となっている。

  • 左から2人目がEl-Khoury氏

    Photo01:左から林孝浩氏(オンセミ日本法人社長)、El-Khoury氏、Michael Balow氏(EVP, Sales)、Simon Keeton氏

さてまず同社のビジネス全般の動向であるが、2022年は82億ドルの売上高であり、2023年も第3四半期までは非常に順調、特に自動車向けでは前年比33%の売上増加を示している(Photo02)。国内でもDesign Winが70%ほど増えたとしている。ちなみにこの70%という数値、El-Khoury氏によれば「半分は新製品の投入に伴うもので、残りの半分は(林社長以下の)日本のチームが頑張った事による」としている。またFab Lite戦略に関してはここ数年onsemiは多数のFabの入れ替えを行っている。昨年のレポートでも新潟のFab売却などに触れたが、今年は韓国富川市のSiC Fabの製造能力を拡充した事を10月25日に発表している。こうした製造設備の最適化を進める事で、より顧客のニーズに沿った製品提供が可能になる、としている。

  • SiCは粗利で40%程度を確保

    Photo02:ちなみにSiCのビジネスは「粗利で40%程度を確保している」(El-Khoury氏)としており、SiCの市場では最高の成績だと説明している (資料提供:onsemi、以下すべて同様)

そんな同社だが、ここ3年程は「Intelligent Power」と「Intelligent Sensing」の2本をビジネスの柱とし、この中で多くの顧客を獲得している(Photo03)が、この2本柱に注力する事で業界よりもより高い成長率を実現できている、とする(Photo04)。

  • Photo03:SensiML以外は全部2022年ないし2023年の発表である

    Photo03:SensiML以外は全部2022年ないし2023年の発表である

  • 成長率の高いマーケットに絞って製品展開をしている

    Photo04:業界全体では4~16%の成長率なのに対し、同社は10~21%と高い成長率が見込まれるとしている。というよりも、成長率の高いマーケットに絞って製品展開をしている、というべきか

さてその2本柱の1本目であるIntelligent Sensing。といっても同社が提供するのはCMOSイメージセンサのみである。ただそこでIntelligenceとは何か? という話で、1つはバックエンド側のISP(Image Signal Processor)を含む後処理でIntelligence性を持たせるという話だが、もう1つはHDRやLED Flicker Freeなど、特に自動車のADASやドライブレコーダなどでは欠かせない特性を提供する事で差別化を図れる、という話であった。ちなみにこのIntelligent Sensingでは、SUBARUの柴田英司氏からのVideo Messageの紹介(Photo06)もあった。

  • HDRとかLED Flicker Freeは別にonsemiだけが提供している訳では無い

    Photo05:もっともHDRとかLED Flicker Freeは別にonsemiだけが提供している訳では無いので、さらにもう一段高いレベルの何かが必要になりそうにも思うのだが、そのあたりを突っ込む時間は今回無かった

  • 柴田英司氏

    Photo06:柴田英司氏(SUBARU Lab所長)。もっともメッセージそのものは、SUBARUのアイサイトにonsemiのセンサーを使っています、という以上のものではなかったが

一方のIntelligent Powerであるが、これはSi/SiCのMOSFETやGate Driverなどを中核とした製品群である。こちらは特に車載のEV化が大きな追い風になっているとする(Photo07)。

  • こちらはCMOSセンサーよりもさらに競合が多い

    Photo07:こちらはCMOSセンサーよりもさらに競合が多い。同社はこれをSiCを核に戦ってゆくつもりのようだ

そのEVに向けて同社が提供するのがEliteSiCブランド(Photo08)のSiC製品である。

このSiC製品、先にFab Liteの所で触れた韓国のFabもそうだが、同社が2019年にGlobalFoundriesから買収したハドソンのFabの稼働などにより、大幅に生産能力が向上。十分な供給体制や多品種の提供が可能になった、とする(Photo09)。

  • 同社の強み

    Photo09:同社の強みはSiC基板だけでなくダイやパッケージ、製品まで垂直統合の形で提供できることで、ここが競合他社との差別化要因だとしている

このEliteSiC、例えばEVを例に取れば発電→蓄電→充電→消費という4つのフェーズすべてで利用可能ということで、今後急速に利用が進むことを期待しているとの話であった。

全体として見ると新しい話は特にないものの、パワーとイメージセンサの2本柱で稼いでゆくという姿勢が明白になった会見であった。

  • GaNについて

    Photo10:逆にGaNについては、確かに自動車向けなどでも急速にマーケットが広がりつつあるものの、今のところ同社のフォーカス対象ではないとの事だった