東北大学は11月6日、「SOKAP(ソカップ)キックオフシンポジウム」を東京都中央区で開催し、SOKAP構想に基づく優れたSOKAP-ResearchやSOKAP-Connectの推進をすでに開始していることや、その実事例の紹介を行ったほか、SOKPAの全体像を伝えるパネルディスカッションなどを実施した。
SOKAPとは、東北大が2023年7月12日に「総合知を行動に繋げ持続可能な社会の実現を目指す『知識行動オープン・プラットフォーム SOKAP』を始動させる」と宣言した構想。SOKAPは「Sustainability Open-Knowledge-Action Platform」の略称(図1)で、「多様なステークホルダーとの共創によって、研究開発と人材育成のポジティブサイクルを生み出すプラットファームだ」と、その推進責任者である小谷元子理事・副学長(図2)は解説する。
このSOKAP構想に基づいて進められている優れた研究事例である“SOKAP-Research”の事例として、環境科学研究科の松八重一代教授が「資源の流れに関わる多様なリスクの可視化」を、また優れた開発事例である“SOKAP-Connect”の事例として農学研究科の野地智法教授が「持続可能な畜産を追求した有用微生物の活用と総合知によるその応用展望」を、それぞれ解説した。野地教授は「現在の日本の牛などの畜産では、病気を防ぐために、抗生物質投与による畜産が一般的だが、今後の持続可能な畜産を追求する研究開発として、牛の腸内の微生物利用技術を研究開発中」と説明する。その研究開発成果の一部を図3に示す。
野地教授は抗生物質投与の代わりに、特徴的な腸内の微生物環境を持つ、ほかの牛の糞を用いて、子牛の腸内環境を改善する研究開発成果を得ているが、これを実際に実用化・事業化するには「農林水産省による(糞利用の)微生物剤の利用認可を得る必要があり、これを実現しようと図っていく」という。そのためには、「関連する法律を変える必要がある。事業化では大学の研究開発活動を超す活動が必要になる」と続ける。そして「研究室では製薬企業の共立製薬と共同研究中であり、その法律改正の実現を図っていく」と、今後の展望を語っていた。
また、続いて開催されたパネルディスカッションでは、2022年5月2日に里山エンジニアリング(宮城県川崎町)というベンチャー企業を創業した工学部電気情報物理工学科電気工学コース4年生の北川桜子代表取締役・CEO(最高経営責任者)が事業内容として「里山エンジニアリングは里山に生えている木々を用いて、“ウッドバッテリー”という再生可能な電池を事業化していく」ということを説明した。この“ウッドバッテリー”の研究開発は、学際科学フロンティア研究所の中安祐太助教が担当してきたもので、同社のCTO(最高技術責任者)に就任している。「当社は研究開発拠点としての拠点を、東北大の工学研究科・工学部内にも持っている」と、北川代表取締・CEOは補足し、工学部系の恵まれた環境に支えられていることを示唆していた。