東京大学(東大)、キヤノン、キヤノンメディカルシステムズの3者は、産学協創協定を11月7日に締結したことを発表した。この協定は「“個々人のQuality of Lifeを最大化し病とも共生する社会の実現”~個別化医療の社会実装で多様な社会・医療要請を解決~」を共通ビジョンとして、個々人に合った最適な医療の提供を通じて、心身ともに満たされた状態である「Well-Being」な社会の実現を目指すもので、東大が進める産学協創協定においては初となる医療分野をテーマに取り組むという。
社会や医療を取り巻く環境は急速に変化しており、少子高齢化や疾病構造の変化、医療従事者自身の高齢化と働き方改革、医療提供の均てん化、医療費の増大など多くの課題解決が求められるようになってきている。
また、患者や家族も含めた診療方針決定への参加、個々人の生き方に応える高度な個別化医療の提供、患者のQuality of Life(QOL)のさらなる向上、一人ひとりの病気の特性と人生観にあった医療を受けられる「プレシジョン・メディシン」実現への期待など、医療への要望についても高度化かつ多様化するなど、Well-Beingが重要視されるようになってきており、従来の視点に加え、患者やその家族と医療従事者が共に創る未来の医療が提供する新たな社会価値の実現が求められているという。こうした社会的な変化を見据え、同協定では市民目線と科学的・医学的エビデンスの両立実現を目指すテーマに取り組んでいくことで、Well-Being実現に貢献していくとする。
協創にあたり、東大は臨床の現場として東大医学部附属病院を有しており、そうした臨床現場で培ってきた智慧があるとするほか、患者との対話などを通じて感じている将来必要となる医療システムの在り方をバックキャストし、医学、工学、人文科学などを含めた学際的な視点に基づく総合的な議論を通じて得られた知見などを提供するとしている。
一方の、キヤノングループは、キヤノンの光学技術や画像処理技術、キヤノンメディカルの画像診断技術・ソリューションなど、画像診断を核とした医療システムにおける技術力とソリューションを提供するとしており、この両者の持つ力を融合させていくことで、共通基盤テーマである「医療における臨床データ利活用」、「CDS(Clinical Decision Support:診療意思決定支援)推進に適した数理生体モデルの実現」の検討ならびに、個別研究テーマである「Well-Being実現に貢献する各疾患個別研究の推進と社会実装」の検討を進めていくという。
なお両者は、これらのテーマを推進することで、社会や医療を取り巻く課題の本質的な解決に向けた真因の追求を進めていくとするほか、市民の視点に立脚した医療政策・倫理的配慮に関わる課題分析などの議論も行いながら、併せて得られた先進の医療技術の社会実装を推進する人財育成の促進も目指すとしており、今後の人生100年時代に対応するWell-Beingの実現に貢献していきたいとしている。