Western Digitalは10月30日(米国時間)、2024会計年度第1四半期(2023年7-9月期)の決算概要を発表した。

それによると売上高は前年同期比26%減の27億5000万ドル、最終損益は6億8500万ドルの赤字となり、4四半期連続の赤字計上となった。また事業部別に見ると、フラッシュメモリ事業が同9.6%減の15億6000万ドル、HDD事業が同40.7%減の12億ドルとなっており、スマートフォン市場やデータセンターの投資低迷の影響からフラッシュメモリ、HDDともに苦戦が続いている。

NANDフラッシュメモリ事業の分社化を計画

決算発表に際して同社はキオクシアと協業しているNANDフラッシュメモリ事業を分社化し、一方のHDD事業もクラウドデータセンター向けの大容量製品の販売に注力していくことも発表している。会社分割および新会社上場は2024年の下期を目指しているという。同社のCEOであるDavid Goeckeler氏は、NANDフラッシュメモリ事業のキオクシアとの経営統合が破談となったことも正式に認めた。

NANDとHDDの2つの事業分割については、米投資ファンドのエリオット・マネジメントをはじめとするアクティビスト(いわゆる物言う株主)から要求が出されてきた経緯があり、Goeckeler CEOは「会社を2つに分離することにより、各社が革新的な技術と製品開発を実行し、独自の成長機会を活用し、それぞれの指導的立場を拡大することができる。各事業をさらに効率的に運営できるようになり、各社はより適切な立場に立つことができる。つまり、2つの事業を分離することで、Western Digitalの株主価値を引き出すことが可能になる。他の戦略的な選択肢が出てくれば、その際に検討する」と述べている。もともとHDD専業メーカーであったWestern Digitalは、2016年にSanDiskを買収する形で半導体メモリ事業に参入していた。しかし、今回の決定により結果としてこの2つの事業のシナジー効果が発揮できずに、元のHDDメーカーに戻ることになる。

今後のNANDフラッシュメモリ事業はどうなるか?

Western DigitalのNANDフラッシュメモリ事業における競合の1社であるMicron Technologyは、CEOのSanjay Mehrotra氏はじめ経営幹部にSan DiskやWestern Digitalからの転職者が多く在籍している。中でもMehrotra氏は、SanDiskの共同創設者で、2016年にWestern DigitalがSanDiskを買収するまで同社のCEOも務めていた。そのためMicronによるWestern DigitalのNANDフラッシュメモリ事業買収のうわさは以前からささやかれてきた。また、Western DigitalのNAND製造パートナーであるキオクシアの事実上の15%株主であり、IntelのNANDフラッシュメモリ事業を買収(現在のSolidigm)するなど、こちらも事業拡大の機会をうかがっているSK hynixが、Western Digitalとキオクシアの経営統合を拒んだことが破談の遠因の1つとも言われており、今後のWestern DigitalおよびキオクシアのNANDビジネスの先行きがどうなるか注目される。