生成AIが話題だが、AIをはじめとした最新のテクノロジーを活用してビジネスを変革するためのDX戦略はどのように考えれば良いのだろうか。

シリコンバレーを拠点とし、100社以上の日本企業にDXのアドバイスを行っているパロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナーで、順天堂大学大学院 データサイエンス学科 客員教授(AI企業戦略)の石角友愛(いしずみ・ともえ)氏が、10月12日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+フォーラム DX Day 2023 Oct. 変革し続けるイノベーションの作法」に登壇。DXの考え方と進め方に加え、今後求められるリスキリングについて話した。

DXは、コアを見極めよ

石角氏はまず、DXの考え方から説明した。「DXはステート(状態)。始まりと終わりがあるものではない」と述べた上で、「会社のコアをデジタル化するという考え方が大切」だと言う。

「DXを進めるにあたり、第4次産業革命の中で、自社のコアがどのように変わるかを再定義することが必要です」(石角氏)

自社のコアを見極め一気に投資して成功している例として同氏が紹介したのが、新型コロナウイルス感染症のワクチンを開発したModerna社だ。同社は自社を製薬会社ではなく、生物学に携わるITカンパニーと位置付けており、コアは薬の開発だと定義している。実際に、コアに深く関わるところに投資してDX化しているといい、中でも、コア事業に対しては8~9割を内製化していることがポイントだと石角氏は説明する。その理由は、コアにおける差別化だ。Moderna社は競合と差をつけるべきところに積極的に投資し、逆に勝負しない領域では市販のツールを活用して省人化を実現しているそうだ。

  • Moderna社の事例

DXを阻むイントレプレナーの壁は「論より証拠」で乗り越える

ではDXを推進しようとしてもなぜうまくいかないのか。石角氏は、3つの壁があると分析する。

1つ目は「FOMO(Fear of Missing Out)の壁」である。これは焦りからくるもので、組織としては課題把握能力が低く、実行できない状態だ。2つ目は「PoC(Proof of Concept)の壁」である。実証実験(PoC)から抜け出せない状況で、課題把握能力は低いままだが、実行能力だけがある。3つ目は社内起業家を意味する「イントレプレナーの壁」である。課題把握能力は高いが、リソースがなく、実行力が足りない状態だ。

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