Infineon Technologiesは、2023年3月に取り交わしたカナダGaN Systemsの買収契約について、各国の規制当局の承認取得を経て、手続きが完了したことを10月24日に発表した。買収額は8億3000万ドルで、全額現金による取引にて行われたという。
GaN Systemsは、2008年に設立されたGaNパワーデバイス専門メーカーで、民生機器や車載やデータセンター向けなどの幅広い市場に向けたGaNパワートランジスタを供給してきた。車載分野では、トヨタ自動車やBMW、Vitesco Technologiesとオンボードチャージャー(OBC)やトラクションインバーター、DC-DCコンバーターの開発で提携している。
今回の買収完了に伴いInfineonは、GaN Systemsを傘下に収め、併せて合計450人のGaN専門家と350以上のGaN特許を有することとなり、パワー半導体における主導的地位を強化し、市場投入までの時間を短縮することが可能になったと説明している。
Infineonのヨッヘン・ハネベック(Jochen Hanebeck)CEOは「GaN技術は、よりエネルギー効率の高いソリューションとCO2削減を可能にし、脱炭素化への道を開く。GaN Systemsの買収は、当社のGaNロードマップを加速し、関連するすべてのパワー半導体技術に精通することで、パワーシステムにおける自社のリーダーシップを強化する」と述べている。
半導体市場調査会社である仏Yole Intelligenceによると、InfineonはGaN Systemsの買収により、GaNパワーデバイスの市場シェアが16%になるという。買収以前のGaN Systemsは、米Power Integrations、米Navitas、中Innoscience、米Efficient Power Conversion(EPC)に続く業界5位のポジションであった。ただしGaNパワーデバイス市場は急成長しているものの、その総額は2022年で1億7500万ドルほどであり、InfineonがGaN Systemsを買収した8億3000万ドルという額は、この市場規模の5倍近い金額となっている。
なお、Infineonは、自社保有の300mm Siパワーデバイス工場への巨額投資を継続して進めているほか、SiCやGaNパワーデバイスでもトップシェアを目指した設備投資や企業買収を積極的に進めている。すでに同社のパワー半導体事業の売上高は日本の主要パワー半導体サプライヤである三菱電機、富士電機、東芝、ローム、ルネサス エレクトロニクス、日立製作所といった6社の当該事業の売上高合計額を上回っており、今回の買収によりその規模をさらに拡大させる見込みである。