NECと東京医科歯科大学と京都大学は10月25日、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募事業である「医療機器等研究成果展開事業(開発実践タイプ)」の研究課題「Cross-Domain Motion GANを用いた変形性膝関節症向けリハビリテーションAIに関する研究」における研究開発プロジェクトを開始したことを発表した。同研究では、変形性膝関節症(膝OA)の患者に対し、個別化された歩行運動プログラムを提供する、リハビリテーションAIシステムの開発を目指すという。

  • ,膝OA向けリハビリAIシステムのイメージ

    膝OA向けリハビリAIシステムのイメージ

膝OAで痛みなどの症状を有する患者は国内で約 800万人と推計されており、重症化すると患者のQOLの低下や手術による医療コストの増大を招くため、保存療法の1つである歩行運動などの有酸素運動により重症化を防ぐことが必要とされている。

また膝OA患者の状態は多岐にわたり、膝の状態も日々変化するため、理学療法士によるリハビリを頻繁に実施することが理想的であるものの、実際は医療費や人的リソースの問題から、パンフレットを渡すなどの指導にとどまっているケースが少なくないという。

このような課題に対し、同研究にて開発するリハビリAIシステムでは、日常生活での患者の歩行状態に基づき、リハビリAIが理学療法士と同等レベルの個別化された歩行運動プログラム(歩数、歩き方に関するアドバイスなど)を作成する。

作成された歩行運動プログラムはスマートフォンのアプリケーションを通じて患者に提示され、患者は自分の身体状態に応じた最適なリハビリを実施することができる。また研究後には、開発したリハビリAIシステムを医療機器として製品化していく予定だという。

NECは、高精度なAI構築のために学習データを拡張する生成AI技術「Cross-Domain Motion GAN=クロスドメイン学習を用いた動作生成技術」と、日常の歩行状態を簡便に計測できる製品「歩行センシングインソール」などの技術・製品により、研究に貢献する。加えて、研究を通じて、膝OAの重症化の予防と患者・医療者の負担軽減を両立することを目指す方針。