量子科学技術研究開発機構(量研機構)は10月24日、世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」(JT-60 Super Advanced)において、5月に再開した「統合試験運転」を経て、日本時間10月23日17時30分頃に、初プラズマ生成(初のトカマクプラズマ生成)に成功したことを発表した。
JT-60SAは、核融合発電(フュージョンエネルギー)の早期実用化を目指し、2025年の運転開始を目指して日本を含む国際プロジェクトで建設が進む核融合実験炉「ITER計画」と並行して、日欧が共同建設した世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置だが、2021年3月に発生した、約-269℃の低温に冷却される超伝導コイルを真空断熱するための容器「クライオスタット」内での超伝導コイル本体と電路をつなぐコイル接続部の絶縁損傷のため、統合試験運転(動作確認のための一連の運転)を中断していた。
中断以降は、実施されたリスク評価に基づき、超伝導コイルへの絶縁損傷を最小限に留められるように改修が実施された。具体的には、損傷した接続部に加え、損傷はないものの同等の構造を有する部分や構造の異なる同種の部分について、徹底した品質管理の下で改修が施され、通常運転とは異なる事象が発生した場合においても、コイルの損傷を抑えるための絶縁強化が行われたという。
また、絶縁損傷に至らないための対策として、超伝導コイルにかかる電圧抑制のための電源設備の改造、クライオスタット内の真空状態を監視するセンサの導入とこれによるインターロック(ある一定の条件が整わないとほかの動作を行えなくなる機構)の高速化が実施されたともしている。
これらの改修作業により、JT-60SAが初プラズマを達成するために必要な性能が確保できたと判断され、2023年5月から統合試験運転が再開された。統合試験運転は、すでに開始されていた真空排気運転、その後の超伝導コイル冷却、通電試験などを経て、複雑なJT-60SAのすべてのシステムが設計どおりに連携して機能することを実証することを目的に行われるもので、この統合試験運転で問題が確認されなかったことを踏まえ、日本時間10月23日17時30分頃にトカマクプラズマの初めての生成が達成された。研究チームでは、これにより、各構成機器が連動して、システムとして機能することが実証され、幅広いアプローチ活動の大きなマイルストーンが達成されたとしている。
なお、量研機構と欧州連合が設立した事業体のFusion for Energyは、今回得られた知見をITERおよび将来の原型炉(JT-60SAやITERの成果に基づいて建設される次期装置で、核融合による発電と経済性を実証するためのもの)に活かすと同時に、核融合発電の早期実現に向けて、引き続き積極的に取り組んでいくとしている。