東北大学は10月23日、半導体原料である黄燐(おうりん)の新たな製造技術確立、および国内での商業生産実現に向けて、住友商事と共同研究契約を締結したことを発表した。
あらゆる身近な電子機器に使用される半導体は、今やデジタル社会やグリーン社会を支える重要な基盤であり、その市場成長は急速に進んでいる。だが一方で、需要の急拡大に供給が追いついておらず、半導体供給能力の強化が喫緊の課題となっている。
半導体原料の1つである黄燐は、半導体上の薄膜を加工する工程で使用される薬液の原料であり、極めて高い純度が必要とされるためその代替は困難だという。また、黄燐の原料となる高品位のリン鉱石が偏在していることや特殊な操業条件が必要となることから、その生産国は限られており、日本は国内需要のすべてを輸入に依存しているのが現状だ。
こうした課題に対して、東北大 未来科学技術共同研究センターの石原真吾特任准教授、同・佐々木康学術研究院、同・長坂徹也教授らは、スラグ、廃酸、下水汚泥焼却灰などの未使用リン資源から回収したリン酸を原料として、リサイクルにより黄燐を製造する研究を行っている。そして今般共同研究契約を締結した住友商事と共に、複数回の実証実験を通じて、製造技術の確立および商業プラントの設計・開発を行うとしている。
具体的には、2020年代後半の国内製造商業生産開始を計画しており、将来的には国内需要のおよそ3割を担うことを目標に掲げているとのことだ。
東北大によると、リサイクル黄燐の製造技術確立および国内生産に向けた今回の取り組みは、その重要性が認められ、経済産業省から半導体の安定供給の確保に係る取り組みとして認定を受け、同省による事業費用の一部助成が決定しているという。
東北大と住友商事は今後、生活および経済活動を支える重要物資の安定供給を通じて、安全保障の観点からも市場の期待に応えていくとしている。