愛媛大学は10月20日、表面にDNAを修飾した金ナノ粒子を用いたDNA検出における表面DNA密度の影響を明らかにしたことを発表した。
同成果は、愛媛大大学院 理工学研究科(理学系)の座古保教授、同・平尾元大学院生を中心に、理化学研究所の研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「RSC Advances」に掲載された。
直径が数~数十nmの金ナノ粒子は、溶液中で分散状態が赤、凝集状態が青紫とそれぞれ異なる色を示す。この特性を利用して、標的分子存在下においてのみ凝集体を形成させ、その溶液色変化を観察することで、標的分子の検出が実現されてきた。特に、一本鎖DNAを修飾した金ナノ粒子は、標的となる遺伝子と完全に相補な二本鎖DNAを形成した場合にのみ凝集体形成が引き起こされる配列特異性があり、さらにその反応が迅速であることから、さまざまな遺伝子診断に利用されている。
しかし、金ナノ粒子に修飾されたDNA密度が遺伝子の検出感度に与える影響についてはわかっていなかった。そこで研究チームは今回、金ナノ粒子に修飾するDNA密度を制御する方法を開発することにしたとする。
そして、凍結法を利用してDNA修飾金ナノ粒子合成を行い、化学物質「エチレングリコール」を用いて、金ナノ粒子に修飾するDNA密度を容易に制御できることを証明することに成功した。従来法では2~3日の時間を要していたが、凍結法ではチオール基を有する一本鎖DNAを金ナノ粒子溶液に加え、-80度で30分程度凍結後、融解するだけで固定化することが可能だ。そして、凍結過程で生じる氷晶の隙間にDNAと金ナノ粒子が濃縮されることで、容易に金ナノ粒子表面にDNAを修飾できるのである。この氷晶間隔をエチレングリコールで制御することにより、DNAと金ナノ粒子の濃縮程度を変化させることで、密度の制御が実現できたと考えられるという。
また密度制御されたDNA修飾金ナノ粒子を用いて、一本鎖DNA検出における修飾DNA密度の影響についての調査も行われた。その結果、修飾DNA密度が低い金ナノ粒子ほど、より高感度にターゲット一本鎖DNAを検出できることが初めて観察されたという。
なお、一本鎖DNAを修飾した金ナノ粒子は、塩(えん)存在下でターゲットとなる相補的な一本鎖DNAを加えると凝集するが、外側末端にミスマッチが生じるような一本鎖DNAを加えた場合は粒子の凝集は起きない。これは、ミスマッチ部位近傍は比較的柔軟で運動性が高く、立体的な斥力が生じているためと推測されている。それに対して、末端が相補的な場合はファンデルワールス力が勝り、塩による粒子間の静電反発力低下と合わさり凝集が生じる仕組みだ。
研究チームは今回の研究結果に対し、今後の遺伝子診断のさらなる高感度化のための基盤になることが期待されるとしている。