アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは10月19日、アクセンチュアに委託した、AIとクラウドを活用して社会課題の解決に取り組む中堅中小企業(従業員 250人未満の企業。以下、MSME)に関する最新のレポートを発表した。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 瀧澤与一氏は、今回の調査について、次のように説明した。

「MSMEと同じような規模の企業を指す一般的な言葉にSMBがあるが、 MSMEは零細企業やスタートアップが含まれることをより明確に示すもの。日本の全企業99%以上、民間労働力の69%、国内総生産の約50%がMSMEによるものであり、MSMEは日本経済を支えている。コロナ禍から脱却を目指す中小企業にとって有意義な調査になるのではないか」

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 瀧澤与一氏

また、瀧澤氏はMSME)をクラウド技術で支援することは、「コスト管理」「ビジネス変革」「利益の好循環」といった側面から、大きな経済的利益を産み出し、社会における最大の課題に対処するためのイノベーションを促すと説明した。

医療・教育・農業で、MSMEが与える経済的および社会的インパクトを調査

続いて、Accenture Strategy and Consulting Managing Director and Economic Insights Lead アーロン・ヒル氏が、同レポートのポイントを説明した。

  • Accenture Strategy and Consulting Managing Director and Economic Insights Lead アーロン・ヒル氏

同レポートは、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、インドネシア、インド、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール、英国、米国の12カ国を対象に、社会的課題に取り組むMSMEのクラウド移行により、2030年までにもたらされる潜在的効果を検証したもの。医療、教育、農業の分野において、MSMEが与える経済的および社会的インパクトの調査が行われた。

今回、世界のMSMEの78%が、 2030年に最も大きな社会的 インパクトを与えるテクノロジーとして、 AIと機械学習を挙げた。ヒル氏は、「クラウドを利用すると、個別学習プランにAIを導入するなど、MSMEはさまざまなシーンにAIを適用することが可能になる」と補足した。

日本国内で社会的課題に取り組むクラウドを活用しているMSME により、2030年には医療・教育・農業の分野で、年間最大1兆 9,000億円相当の生産性向上効果と520万人の雇用 を創出が創出される見込みであることがわかった。520万人の雇用は、日本の総雇用者数の7%に相当するという。

  • 2030年に、クラウド主導経済の下、社会的課題に取り組むMSMEにより創出される生産性向上効果

  • 2030年に、クラウド主導経済の下、社会的課題に取り組むMSMEにより、医療・教育・農業の分野で520万人の雇用が創出される見込み

加えて、今回の調査では、2030年の予測として、以下も示されている。

  • MSMEにより、医療分野で、年間1兆2,000 億円相当の生産性向上効果が創出され、国内で6,000万件のオンライン医療相談が利用される
  • MSMEにより、教育分野で年間 5,000億円相当の生産性向上効果が創出され、国内の学生400万人がeラーニングを介して教育にアクセスする
  • MSMEにより、農業分野で年間1,000億円相当の生産性向上効果が創出されると見込まれ、3軒に1軒の農業従事者が精密農業ソリューションを利用する

MSMEのクラウド移行やLLM活用を支援するAWS

AWSジャパンはMSMEの支援に注力しているが、瀧澤氏は、同社のMSMEの支援策として、以下を挙げた。

  • 多様な業界の企業にプログラムを提供
  • パートナーコミュニティと共に変革を促進
  • 社員のデジタルスキル向上を支援

MSMEに提供しているプログラムとしては、「AWS Activate」「ITX Lite」「AWS LLM開発支援プログラム」がある。「AWS Activate」は、スタートアップ企業に無料のAWS クレジット、技術サポート、トレーニング、リソースなどを提供するプログラムだ。

「ITX Lite」は、中小規模の企業を対象としたクラウド移行支援プログラムだ。詳細はAWS、中堅・中小企業向け事業戦略説明 - 鶴見酒造が活用事例を紹介で確認いただきたい。

「AWS LLM開発支援プログラム」は、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)の開発を行う日本に法人または拠点を持つ企業・団体を支援する、日本独自のプログラムだ。詳細は、日本独自の「AWS LLM 開発支援プログラム」開始、コストの一部を負担で確認いただきたい。

また、パートナーコミュニティに対しては、エンドユーザーに最適なソリューションの開発を支援するため、AWSパートナーネットワーク リソース、ツールを提供しているという。

瀧澤氏は、中堅中小企業向けのサービスを販売できる「AWS Marketplace」において、33万を超えるアクティブカスタマーがいることも紹介した。

さらに、企業の社員教育に対しては、最新の技術を身に着けられるよう、600以上のトレーニングを提供している。今年7月からは生成AIのための7つのオンデマンドトレーニングを提供しており、それらのうち4つは日本語で提供されているという。