10月17日から20日まで、幕張メッセで開催されているCEATEC 2023。同展示会は毎年10月に開催されている総合展示会で、経済発展と社会課題の解決を両立する『Society 5.0』の実現を目指し、あらゆる産業・業種の人と技術・情報が集い、『共創』によって未来を描く」を開催趣旨に掲げているもの。
2023年は、アドバンスドテクノロジー、キーデバイス、パートナーズパーク、グローバル、スタートアップ&ユニバーシティエリアの計5つのエリアに分け、各ジャンルの最新のテクノロジーを転じている。
本稿では、5つのエリアの内、アドバンスドテクノロジーエリアに出展している日立の「災害時EV活用ソリューション」について紹介する。
日立では、今後急速な普及が期待されるEV(電気自動車)を「これからの車の新たな役割」とみなし、災害時の給電装置として活用するEV活用ソリューションを開発している。
今回の展示では、地方自治体が立ち上げる災害対策本部および一次避難所を対象に、必要十分なEVをマッチングし、避難所に派遣するITシステムをデモンストレーションを交えて紹介された。
展示ブースに入って、すぐに目に入るゲーム画面のような筐体が、今回の災害時EV活用ソリューションのデモストレーション用の機械だ。住宅街の中に、避難所となる学校の体育館と2台のEVが設置されている。この2台のEVを避難所の前に運ぶことで、給電装置として活用した際のイメージ画像が流れる仕組みとなっている。
デモストレーションが始まり、筆者が何も考えずにEVを手に取って移動させようとすると、説明員に「少し待ってください」と止められた。
「本当に自分のEVを避難所の給電装置として活用してしまって良いですか?この車はあなたの物です。今回の展示は、災害時に自分の車を避難所に必ずしも提供しなくてはいけない、という考えのものではありません。災害に遭った時に、自分ならどうするか。またその時にどう行動するか、それを考えていただくための展示なのです」
この言葉を聞いて、災害時に自分のEVを提供するべきかどうか改めてしっかりと考え、筆者は再び手に取り、避難所の前に移動させた。
避難所の前に車を移動させると、電気ポッドや空気清浄機、洗濯機といったさまざまな電化製品が使用可能になったという案内が表示される。しかし、しばらくすると「まもなく電欠します」という案内とともに、その製品が再び使用できない状況に戻ってしまうため、他のEVを運んでくる必要性があるのだ。
日立は、このような活用方法があるということを多くの人に広めていくことで、EVの可能性を広げていきたいという。
実際の訓練では、投光器や扇風機などを持ち込んで、EVを電源にしてどれほど使えるのかということを実証した。災害対策本部と見立てた小学校の体育館にEVの日産リーフ1台と可搬型給電器を持ち込んでフル給電(4.5kW)させ、訓練期間中の2時間にわたって問題なく使えることを市役所の職員に確認してもらったそうだ。
今後はV2H(Vehicle to Home)と言われる自動車から建物に対して直接給電できるシステムも普及していくため、検証を進めてく構えだという。