EY Japanは10月18日、グローバルおよび日本で開発したアセットを活用したESG(環境・社会・ガバナンス)デジタルプラットフォームを開発し、クライアントのデータ利活用によるサステナビリティ経営支援を強化すると発表した。

それに伴い、ESGデジタルプラットフォームについての記者説明会を開催し、サステナビリティ経営の最新の動向や、新たに発表されたESGデジタルプラットフォームの詳細を紹介した。説明会には、EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサーである瀧澤徳也氏と同 アドバイザー (サステナビリティ・テック統括責任者)の松永達也氏が登壇した。

サステナビリティ経営を取り巻く2つのキーワード

最初に登壇した瀧澤氏は、「サステナビリティ経営を取り巻く動向」というテーマで、2つのキーワードを紹介した。

「1つ目のキーワードは、『バリューレッドサステナビリティ』、つまり『価値創造型のサステナビリティ』です。元々、サステナビリティ経営に関しては、社会への貢献活動という意味合いが強く考えられていたのですが、最近になってビジネスとしての意味も持つようになりました」(瀧澤氏)

  • ,サステナビリティ経営に関する2つのキーワードを語る瀧澤氏

    サステナビリティ経営に関する2つのキーワードを語る瀧澤氏

この価値創造型のサステナビリティの特徴は、2つ目のキーワードにも挙げられている「サステナビリティズエブリバディズビジネス」、つまり「無関係者はいない」というものだ。従業員や生産と製造、物流などさまざまなステークホルダーたちが重要な関係者としてサステナビリティ経営に関わっているのだという。

  • ,「サステナビリティズエブリバディズビジネス」に挙げられる8つの関係者

    「サステナビリティズエブリバディズビジネス」に挙げられる8つの関係者

その中でも特に「従業員」「投資家と規制局」「顧客と消費者」という3つに関しては、ビジネスの面で大きな意味合いを持っており、これらの人々の意向を十分に理解することが重要とのことだ。

ESG戦略の最優先事項は「価値を生み出す要因を明確にすること」

しかし、すべての関係者に行動を呼びかけるのは容易ではない。そこで重要になってくるのが「バリュー(価値)」だ。

「サステナビリティ経営は、世の中に良いことをするという文脈ではあるものの、やはり人間を動かすという時には、『価値を深めていく』という観点が非常に大きいというように思います。一言で価値と言っても、その中身はさまざまで、大きく『顧客価値』『人材価値』『社会的価値』、そして『財務的価値』という4つに分かれています」(瀧澤氏)

ここで語られる顧客価値とは、イノベーションや信頼、ブランドに重点を置いた、顧客や最終消費者のニーズを満たす製品やサービスの設計、開発および提供のことを指す。また、人材価値は、文化、エンゲージメント、DE&I(ダイバーシティ&インクルージョン)、リーダーシップ、専門知識、スキルに関して人材の雇用と育成を通じて創造される価値のこと、社会的価値は環境、サプライチェーン、規制、地域社会、経済の観点から企業が与える影響のことをだという。

そして、財務的価値は収益の創出、コストの最適化、資本構成による企業価値の向上を表している。

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    4つのバリューのイメージ

滝沢氏は「これらの価値を生み出す要因を明確にして測定し、伝えることが、企業のESG戦略の最優先事項」だと位置付け、企業が注目しているサステナビリティとESGの主要課題について「生物多様性に向けた社会変革」「人的資本」「テクノロジーの活用」の3つを挙げた。

ESGデジタルプラットフォームの3つの特徴

続いて登壇した松永氏は、上記のような潮流を受けて、EY Japanが開発した、企業のサステナビリティ経営の加速を支援する新しいESGデジタルプラットフォームの詳細を紹介した。

今回、発表されたESGデジタルプラットフォームは、企業が保有するESG関連データを利活用し、ESGトレンド調査、マテリアリティ分析、ESG 中長期戦略策定、非財務KPI策定とモニタリングといった企業のESGの取り組みを包括的にワンストップで支援するものとなっている。

「ESGデジタルプラットフォームは、大きく3つの特徴があります。1つ目は『グローバルで事業を展開する企業が使いやすいシステム』という点です。ESG関連のデータの開示基準については、国や地域によってさまざまで世界で統一された基準があるわけではありません。そのため、それぞれの国や地域の基準に従った形で開示しなければいけないことから、時に煩雑で、また専門性が必要な作業もあります。その点、ESGデジタルプラットフォームは、主要な国や地域の開示基準枠組みに準拠しているため、安心して利用できるシステムとなっています」(松永氏)

  • ,ESGデジタルプラットフォームの概要を語る松永氏

    ESGデジタルプラットフォームの概要を語る松永氏

第2の特徴として挙げられたのは、マイクロソフトのテクノロジーとEYの知見が融合されたシステムになっているという点だ。

今回、発表されたサービスは、マイクロソフトのグローバルと日本のチーム、そしてEYのグローバルチームと日本のチームが連携しながら開発した。マイクロソフトのテクノロジーの活用実績とEYのプロフェッショナルな知見が融合されて分かりやすいシステムに仕上がったそうだ。

最後に、3つ目の特徴は、このデジタルプラットホームフォームについて「ワークショップ形式で体験できるプログラムを提供する」ということだ。

このワークショップは、日比谷ミッドタウン内のEY本社にある、EY wavespaceという新たなイノベーションを実現するためのスペースで実施されるもので、ESG戦略策定や課題の特定、同デジタルプラットフォームのPoV(価値実証)が行える最長2日間のワークショップ型プログラムとなる。

クライアントとEYが、インタラクティブに議論してデジタルプラットフォームの価値を実証するプログラムとなっており、デジタルプラットフォームをどのように活用し、カスタマイズしていく必要があるか、またデジタルプラットフォームを通してESG戦略をどのように考えるかなど、クライアントの取り組み状況や課題に合わせて行われるという。

瀧澤氏は、今回のデジタルプラットフォームの提供に際して、以下のようにコメントしている。

「EYでは2014年に『Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)』をパーパスに掲げました。ESGに積極的に取り組み、組織のDNAに組み込まれているとも言えます。またEYではLong-term value(長期的価値)の創出を見据え、サステナビリティやESGの重要性を高め、クライアントをサポートするとともに自らもその推進に努めています。また、自らをより持続可能な企業とすると同時に、サステナビリティに関連するデジタルを含むサービス提供のための開発と投資を行っています。今回の取り組みもその一環であり、今後も価値を軸にした持続可能性の追求に重点を置いたソリューションの提供を通じて、クライアント各社によるサステナビリティや脱炭素の推進を支援していきます」(瀧澤氏)