アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS Japan)は10月18日、北米・西欧・アジア太平洋地域における通信事業者の生成AI利用に関する調査レポートを発表した。これによると、通信事業者の半数が今後2年以内の生成系AIの利用を計画し、生成系AIへの支出が現在の最大6倍に拡大すると予測している。

同調査は米Amazon Web Serviceが北米、西欧、アジア太平洋地域の通信事業者の幹部100人以上を対象として実施し、9月27日(現地時間)に発表したもの。

主な調査結果として同社は、1)生成系AIの利用は今後2年間で大きく拡大、2)北米の通信事業者が生成系AIの利用で他地域をわずかにリード、3)顧客対応チャット・ボットが生成系AIのユースケースとして、いち早く普及、4)データ・セキュリティとガバナンスが生成系AI利用における最大のチャレンジであり、実現に向けた重要なイネーブラー、5)通信事業者は自社開発よりも既存モデルの利用を想定、の5点を挙げている。

  • 生成系AIに取り組んでいるか高い可能性の下で検証している回答者の割合 出典: AWS Japan

生成系AIの利用状況について、通信事業者の4つの業務領域(製品・マーケティング、カスタマー・サービス、ネットワーク、社内IT)をまたぐ17のユースケースについて調べたところ、生成系AIを既に利用しているか、利用に向けて取り組んでいるとした回答者は全体の19%だった。

この数値は今後さらに拡大するといい、1年以内に34%、2年以内に48%に達する見込みであり、生成系AIへの支出も現在の最大6倍に拡大する可能性がある。この拡大を牽引するユースケースはチャット・ボットだが、通信事業者の64%は検討している生成系AIのユースケースの多くが、既存のアプリケーションやプロセスではまだ実現していない新たなアプリケーションだと述べているとのことだ。

生成系AIの利用度は、北米の通信事業者の22%が利用または利用に向けて既に取り組むと回答しており、他の地域からやや先行している。

アジア太平洋地域の通信事業者(同16%)は、他地域と比べ緩やかなデータ規制の環境にいるが、言語などのローカライゼーションの課題に面しているという。特に北米以外の通信事業者にとっては、AI利用やデータ規制、データ・レジデンシーに関する現行および今後の規制が重要な考慮点になると同社は指摘する。

同社は、生成系AIがまずは顧客対応チャット・ボットに取り入れられていることは自然な流れとしている。回答者の92%が、導入の可能性の高いものとしてカスタマー・サービスとチャット・ボットを挙げ、そのうち63%が既に開発を進めていると回答した。

生成系AIの利用の課題として、通信事業者の61%が、データ・セキュリティ、プライバシー、ガバナンスに関する懸念を表明しているという。通信事業者が自社の業務に生成系AIを利用するには、各社が保有する膨大な量のデータが必要となる。広く利用可能な大規模言語モデル(LLM)はあるが、自社保有のデータがこうしたモデルそのものに組み込まれることには、知的財産権上の懸念があると同社は指摘する。

また、技術的リソースの不足を挙げる通信事業者もあった。社内で基盤モデルを構築したいと回答した通信事業者は15%にとどまり、その他は既存の基盤モデルの利用を想定している。回答者の65%は既存の基盤モデルを社内の専有データで追加学習し、各社それぞれのニーズに対応させたいと考えている。