石川県立大学は10月17日、石川県で品種登録されているモチ米の品種である「カグラモチ」と「白山もち」それぞれから作ったモチの硬さに違いが生ずる要因について、モチ米に含まれているデンプンの構造を分析した結果、白山もちはカグラモチよりも長さが短い糖鎖を多く持つことが判明し、その違いがモチの硬さの違いに影響を与えていることが考えられると発表した。

同成果は、石川県立大 食品科学専攻の齋藤泰宏大学院生、同・大学 環境科学科の勝見尚也准教授、同・大学 生産科学科の高木宏樹准教授、同・大学 生産科学専攻西川みなみ大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、穀物に関する全般を扱う学術誌「Journal of Cereal Science」に掲載された。

  • ガラクモチと白山もちからモチを作り、一日後にひもで吊り下げた様子

    ガラクモチと白山もちからモチを作り、一日後にひもで吊り下げた様子。白山もちの方がカグラモチより大きくしなっており、柔らかいことがわかる。今回、その理由が判明した(出所:石川県立大Webサイト)

一般的に食するお米は「うるち米」と呼ばれ、モチやせんべいなどの材料として使われるのがモチ米である。成分に差があり、お米を構成する主に2種類のデンプン成分の高分子「アミロース」と「アミロベクチン」がうるち米ではおよそ15~35:85~65の割合なのに対し、モチ米は100%がアミロベクチンだ。役割として、アミロースはお米の硬さを担い、アミロベクチンはお米の粘りを担う(アミロベクチンが多いほど粘りのあるお米になる)ため、うるち米に対しモチ米はよく粘るのである。

ガグラモチは石川県を代表するモチ米で、1963年に推奨品種に採用された歴史のある水稲モチ米だ。その名称は神事の歌舞「神楽」に由来しており、神社仏閣のお供えにも使用されている最高級のモチ品種とされる。一方の白山もちは、1975年に品種改良によって生み出され(推奨品種に採用されたのは1987年)、こちらも歴史のある水稲モチ米だ。その名は、石川県白山市と岐阜県大野郡白川村の間にある日本三大霊山の1つである白山にちなんでいる。

カグラモチと白山もちはこのように同じモチ米であるにも関わらず、それぞれから作られたモチの硬さに違いがあり、白山もちの方が柔らかいことがわかっていた。そこで研究チームは今回、その違いが生じる要因を調べることにしたという。

両者から作られたそれぞれのモチに含まれているアミロベクチンの詳細な成分が分析されたところ、白山もちのモチの方が、カグラモチよりも長さが短い糖鎖を多く持つことが明らかにされた。

糖鎖とは、グルコース(ブドウ糖)やガラクトース(果糖)など、糖質(炭水化物)の最小単位である単糖類が複数、グリコシド結合によって鎖状に連なったもののことである。基本単位の単糖自体多くの種類があるため(化学式「(CH2O)n」で表され、nは3以上、通常は5~6、多いと9にも及ぶ)、それだけ糖鎖も数多く存在し、同じアミロベクチンであっても特徴に違いがあり、それがもちの硬さの違いにも影響を与えていることが考えられるとした。