クボタは10月16日、日本IBMと共同開発した、スマート水道工事システム「PIPROFESSOR(パイプロフェッサー)」の本格提供を開始した。同システムは、水道工事に伴う図面や書類作成業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するサービスとなる。
日本国内では、法定耐用年数の40年を超えた水道管路の割合が約2割に達し、このまま水道管路の老朽化が進行すると破損による漏水や断水など、ライフラインに影響が生じるリスクが高まるため、早急に管路の更新を進める必要があるという。
しかし、水道管路の更新ペースを示す管路更新率は年々低下し、現状の年0.65%*のペースでは、すべての管路を更新するのに150年以上かかる計算となっており、多くの水道事業体は財政難や職員不足の状態なほか、工事業者も人手不足や技能継承の課題を抱えている。
パイプロフェッサーは設計、施工計画、施工管理の各業務に対応した3つのアプリケーションと、そのデータから報告書類を自動作成するアプリケーションで構成。主に工事業者による利用を想定しており、必要なアプリケーションを月額または年額制の定額課金(サブスクリプション)で利用できる。
「自動配管設計支援システム(PIPE-Pro)」はクボタ独自のAI技術を活用して、高精度な管路の設計図面・書類を自動で作成し、「施工計画システム」は独自の工程算出アルゴリズムにより効率的な施工工程を自動算出し、工程計画表や作業指示書などのもとになるデータを作成。
また「施工情報システムⅡ」は、現場で使用するスマートフォンアプリとなり、ガイダンスに従って水道管の接合チェックなどを行い、その施工データを入力することで施工品質を確保しながら工事日報や管割図のもとになるデータを蓄積する。
「提出書類作成支援システム」は、施工計画システム、施工情報システムⅡのデータをもとに、着工前から工事中、完成後に必要な各種報告書類を自動で作成。作成頻度が高いまたは煩雑な計算を伴うなど作業負荷の高い書類を中心に、約20種類の書類に対応する。
個々のアプリケーションによる効率化・自動化に加え、各アプリケーション間のデータ連携により、従来は業務間でのデータ再入力が必要で作業負担が大きかった工事関係書類の作成を自動化できるようになるという。
例えば、設計変更が生じた場合にも、施工データを自動で反映して工程表や管路図を再作成することを可能としている。新システムの利用により、設計業務の経験が浅い工事業者でも短時間で熟練者のように高精度な設計ができ、その後の業務における書類作成の負担も軽減できるため、昨今採用が増えつつある設計・施工一括発注方式(DB方式)への対応力強化への貢献も期待できるとのことだ。
システムの共同開発にあたり、製品供給のみならず設計・施工・維持管理業務の受託まで幅広く事業を展開している同社が蓄積した管路に関する技術と、日本IBMの持つ最新テクノロジーを活用したシステム設計・構築・運用の知見を融合している。
クボタはシステムの全体構想や、設計、工程算出を自動化するアルゴリズムの開発、システムに必要な配管技術などのノウハウの部分を担っている。
日本IBMはMicrosoft Azure上でのデータプラットフォームの構築に加え、施工計画における工程算出アルゴリズムの実装や施工管理で用いるiOSアプリの開発、提出書類自動作成機能の開発など、アプリケーションの設計・開発および運用を担当している。
今後、クボタはパイプロフェッサーを構成するアプリケーションの拡充を図るとともに、維持管理・更新計画業務に関するソリューションについても早期の提供開始を目指し、水道管路全体の課題解決に貢献するソリューション提供を順次進めていく方針だ。