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基幹システムとは

システムエンジニアやプログラマーを目指すエンジニアの皆さんは、今後、情報システムの開発で、基幹システムの開発に携わる機会があることと思います。この記事では、そんなエンジニアの皆さんが知っておくべき基幹システムについて、採り上げます。

基幹システムの定義、基幹システムの種類、情報系システムや業務システム、ERPとの違い、基幹システムを導入するメリットなどについて、わかりやすく解説していきますので、今後基幹システムの開発や更新に携わる際の参考にしてください。

基幹システムを定義すると

基幹システム(基幹系システムとも呼ぶ)は企業の4大資源と言われる『人、モノ、金、情報』に関わる業務を効率的、効果的に管理するシステムのことです。基幹システムは会社や組織の根幹をなす業務機能をシステム化したものです。

業務システムはそれぞれの業務の効率化を図る目的で導入されますが、その業務システムの中でも、特に会社の活動と一体となったシステムを「基幹システム」と称します。

基幹システムに障害が起きて停止すると

誰もが知る「基幹システム」としては、銀行など金融機関の「勘定系システム」があります。「勘定系システム」はどの銀行でも導入されており、口座残高や融資残高の管理、預金や融資の利息計算などの、銀行の基幹業務を支えています。

勘定系システムは「オンライン処理」と「バッチ処理(オフライン)」の2種類があり、それぞれが連動しながら並行して稼働しています。

基幹システムは企業活動そのものと密接な関係があり、基幹システムが停止すると企業活動まで停止してしまうリスクがあります。昨今社会問題となった銀行のATM停止は、まさに基幹システムの障害が原因でした。

このように「基幹システム」は企業活動を支えているという認識を持つことが大切です。

基幹システムの代表的な例

基幹システムと呼ばれるものは、その組織の存続に関わる基幹業務や機能と密接に関わるシステムであることが分かりました。

基幹システムを一覧で表すと次のようになりますが、ここに挙げたものが全てではありませんが、一般的な例として覚えておいてください。今後、皆さんがシステム開発に関わる際には、それがどの種類の基幹システムなのかを考えてみると、より仕事への興味が増すことでしょう。

▪生産管理システム

▪購買管理システム

▪販売管理システム

▪受発注在庫管理システム

▪顧客管理システム

▪人事給与システム

▪財務会計システム

▪勘定系システム(金融系)

ERPと基幹システム

基幹系システムの開発に関わると、「SAP ERP」という言葉を耳にすることがあります。SAPはヨーロッパ最大級のソフトウェア会社で、SAP社が提供するERP総合パッケージ製品の名称が「SAP ERP」です。

ERPとは企業資源計画を意味するEnterprise Resource Planningの略で、基幹システムに分類される各種システムを統合したものです。多くのERP製品は基幹システム用として開発、提供されていますが、情報系システムとも連携できる柔軟性を兼ね備えています。

【参考】:SAP ERP|SAP 公式

地方自治体の基幹システム

基幹業務は企業のみならず、政府や地方自治体にもあります。たとえば、住民基本台帳、戸籍、印鑑登録、住民税、国民健康保険など20の基幹業務がありますが、必ずしも統一された仕組みにはなっていません。

新設されたデジタル庁では、こうした地方公共団体の基幹業務システムの統一や標準化の推進を行っています。これによって住民サービスの向上と行政の効率化を進めていくことになっています。

【参考】:地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化について

基幹システムと情報システムの違い

基幹システムは情報の記録や処理、伝達などを行う仕組みである「情報システム」の1つです。情報システムには「基幹系システム」と「情報系システム」の2種類がありますが、それらの違いについてこれから確認してみましょう。

基幹系システム

「基幹系システム」の大きな特徴としては、組織の根幹や組織活動そのものに関わるシステムであることです。

企業であれば、生産管理システムや販売管理システム、或いは財務会計システム、人事給与システムなどが基幹系システムであり、日々の事業活動に関わるデータ処理や、そのデータの記録などが行われています。

「基幹系システム」は、その停止が事業活動などに大きな影響を及ぼす点も特徴として挙げられます。

情報系システム

「情報系システム」は業務の効率化や情報共有など、日常業務に関わるシステムのことです。たとえばメールシステム、スケジューラー、グループウェア、Web会議システムのような業務の効率化や社内外とのコミュニケーション、情報共有などを目的としたシステムのことです。

これらのシステムは、仮に停止したとしても代替手段があるため、短時間の停止であれば、事業活動に深刻な影響を及ぼすことは少ない点が、「基幹システム」とは大きく異なります。

基幹システムの導入メリット

基幹システムは一般的に、システム規模は大きく、その開発や導入には大きなコストが掛かりますが、導入するとどのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。

基幹システムには大きく分けて以下3つのメリットがありますが、基幹システムが停止した際にはリスクがあることを忘れてはなりません。

業務の標準化

基幹システム導入の最初のメリットは、「業務の標準化」にあります。とかく属人的になりがちな業務を標準化、統一化することで業務の品質を一定に保つことが可能となります。

業務の効率化

基幹システム導入の2番目のメリットは「業務の効率化」です。基幹システムによって、作業効率は上がり、また人的ミスも減少します。企業規模が小さい内は、給与計算などはExcelなどのソフトを用いて対応できますが、企業規模が大きくなると手作業では対応できなくなります。

基幹システム導入により、業務の効率化が図られ、膨大な業務も少人数で対応ができるようになります。

経営の可視化と意思決定の迅速化

企業経営では、売上情報や販売情報、経営情報を迅速に把握し、具体的な施策の立案と迅速な意思決定が求められます。基幹システムを導入し、そこから発生する各種情報をデータベース化することで、必要な経営情報が可視化され、迅速な意思決定を可能とします。

基幹システムの開発・導入で留意すべきこと

基幹システムは企業や組織にさまざまなメリットをもたらしますが、一方で基幹システムを導入することで新たなリスクを抱えることがあります。新たなリスクを想定し、その極小化を図りながら開発・導入を進めることが重要です。

基幹システム導入は目的ではなく手段

政府提唱のDX推進は多くの企業の課題となっていますが、DX推進は経営課題達成のための手段であり、目的ではありません。その点を履き違えると、せっかく大きな投資を行っても、それに見合うだけの効果は得られません。

システムの開発や導入には必ず目的があります。基幹システム導入の目的は経営課題の解決です。何が経営課題なのか、その課題解決に向けた要件が何かを把握することが基幹システム開発・導入において重要です。

システム停止リスクを考慮する

基幹システムの開発・導入によって企業の経営課題が解決できても、基幹システムには停止リスクに対する備えが必要です。基幹システムは企業や組織活動の根幹を支える仕組みのため、基幹システムの停止は重大な損失を招く可能性があります。

クラウドなどを利用したバックアップやセキュリティ対策が必須と考えてください。

使い勝手が悪いと効果が得られない

基幹システムは業務に直結しています。業務から離れた基幹システムでは意味がありません。また、システムを実際に利用する従業員に対する配慮が必要です。使い勝手が悪ければ、従業員のモチベーションは低下し、システム化の効果が得られない事もあります。

実際にシステムを利用する立場に立って、システムの開発やカスタマイズを行うべきです。

ERPの採用ではカスタマイズを最小限に

ERPを採用する場合には、「ERPを業務に合わせてカスタマイズするケース」と、「ERPに業務を合わせるケース」の2パターンがあります。失敗するケースは前者の、現行の業務フローに合わせてERPを大幅にカスタマイズするケースです。

基本的にERPパッケージは、あるべき業務フローを前提に作られていますので、現行の業務フローが正しければ、さほどカスタマイズの必要性はありませんが、大幅なカスタマイズは逆にERPの良さを活かせない可能性があります。

現行の業務をERPに合わせ、極力カスタマイズを行わない方法でERP導入を検討するのが良いでしょう。

基幹システムの開発に携われるエンジニアに

「基幹システム」の概要や、「基幹システム」のメリット、導入で注意すべき点などについて解説してきました。「基幹システム」は各企業や自治体などの活動の根幹となる重要なシステムです。こうした「基幹システム」の設計や開発に関われるのは、エンジニアとして大変名誉なことです。

一方で、「基幹システム」では絶対に失敗は許されません。開発プロジェクトに参加するメンバー全員に最高のパフォーマンスが求められます。将来、「基幹システム」の一員として指名されるよう、皆さん方のスキルアップを願っています。