マネーフォワードは10月13日、2023年11月期第3四半期の決算説明会をオンラインで開催した。同社 代表取締役社長 CEOの辻庸介氏が出席し、説明を行った。
第3四半期も前期に引き続き順調に推移
同社では、バックオフィスSaaS(Software as a Service)を中心とした「ビジネスドメイン」、決済サービスといった「ファイナンスドメイン」、SaaSマーケティング支援を行う「SaaSマーケティングドメイン」、Fintech推進・DX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う「Xドメイン」、家計簿アプリをはじめとした「ホームドメイン」の各ドメインを有する。
辻氏は第3四半期を振り返り「売上高、SaaS ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)、EBITDA(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前利益)ともに見通しを達成した。第2四半期に通期見通しの上方修正を発表したが、達成に向けて順調に推移しており、下限を切り上げた」と説明した。
各ドメインの概況
全体の第3四半期連結売上高は前年同期比37%増の75億円、SaaS ARRは同40%増の211億3000万円、売上総利益は同43.4%増の47億5900万円、EBITDAは前四半期のマイナス6億2000万円から同3億4000万円となった。
10月1日から施行されたインボイス制度、来年1月の改正電子帳簿保存法の本格施行により、クラウドサービス普及の追い風になっているという。
ビジネスドメイン
ビジネスドメインの売上高は前年同期比45%増の46億3000万円、法人と個人事業主を合わせた課金顧客数は同27.7%増の28万5349人、ARPA(Average Revenue Per Account:1アカウントあたりの平均売り上げ)は同11.1%増の5万8328円、法人向けARRは同44%増の150億3000万円、中堅企業は同65%増の59億4000万円、法人顧客の解約率は3カ月平均で0.7%となった。
辻氏は「インボイス制度に完全に対応できている事業者は依然として5割未満。クラウド対応が不可欠だ」と語るように、同制度と改正電子帳簿保存法で請求書の発行・保存におけるクラウド対応が不可欠となっている。さらに、請求書のデジタル化が促進されることで会計システムのクラウド化ニーズも増加している。
こうした影響から、9月には「インボイス」キーワードにおける同社サービスの流入が8月と比較して9倍に急増したほか、セミナー申込も昨年比で2倍に増加しているという。辻氏は「システムを導入していない場合、制度への対応のため業務負担が増加する。当社ではインボイス領域において請求書発行側と請求書受領・支払側の双方のプロダクトをラインアップしている」とアピールした。
また、両制度への対応に合わせてマーケティング投資を強化しており、「マネフォワード クラウド」の導入を推進するためのキャンペーンや動画コンテンツによるPR、リアル開催の展示会への出展などを実施している。
ファイナンスドメイン
ファイナンスドメインの売上高は前年同期比55%増の4億6800万円、請求・決済代行事業(ストック売上)は同36%増の1億4000万円。フロー売上は売掛金早期資金化事業でパートナーからの送客が好調だったことに加え、HIRAC FUNDの投資有価証券売却に伴う売上計上で同66%増の3億2700万円となった。
請求代行サービスの「マネーフォワード ケッサイ」、企業間請求代行の「SEIKYU+」で物販・EC事業者向けのインボイス制度対応機能を拡充したことに加え、オンラインファクタリングサービス「Biz Forward」の累計取扱高が100億円を突破したという。
SaaSマーケティングドメイン
SaaSマーケティングドメインの売上高は前年同期比7%増の7億6400万円となり、オンライン展示会「BOXIL EXPO」の開催はなかったが、他事業が好調に推移したという。
BOXIL SaaSでは、Open AIの「ChatGPT」のAPI連携でコンシェルジュ機能「チャットでSaaS提案(β版)」の提供を開始し、投稿されている口コミや製品情報の詳細や記事からユーザーに適した回答を会話形式で提示している。
Xドメイン
Xドメインの売上高は前年同期比56%増の6億1600万円、ストック売上は同42%増の3億1500万円、フロー売上は同73%増の3億100万円となった。
DX支援サービス「Mikatano」シリーズをはじめ、金融機関などの法人向けサービスの導入が進み、提供サービス数は175件まで増加。うちMikatanoシリーズ単体では81件となり、導入した金融機関は36に増加し、八十二銀行がインボイス制度や改正電帳法の需要に向けて、同シリーズのCMを放映している。
ホームドメイン
ホームドメインの売上高は前年同期比20%増の10億1000万円と、ドメイン単体の四半期売上が10億円を突破。プレミアム課金収入は同30%増の6億5600万円となり、家計簿・資産管理アプリの「マネフォワード ME」の利用者数は1500万、課金ユーザーは51万を突破し、順調に成長している。
マネーフォワード MEの投資資産管理に特化した「資産形成アドバンスコース」では今後、ポートフォリオの複数作成機能や並び替え機能の追加で柔軟な資産分析を可能にする。また、ユーザーからの要望が多かったETF(上場投資信託)を米国株式のポートフォリオに追加し、業種別のページで各銘柄の詳細な状況も確認可能にするなど、新機能を順次アップデートしていく。
業績見通しは、第4四半期の売上高は80億5000万円~87億円、SaaS ARRは224億1000万円~231億4000万円を計画。同期の見通しをふまえて、通期の売上高は連結売上高は期初時点の296億4000万円~302億8000万円を見込んでいる。