キンドリルジャパンは10月12日、オンラインで事業戦略説明会を開催した。説明会には同社 代表取締役社長の上坂貴志氏らが出席した。
数年間で日本国内において1億ドルの投資を実施
はじめに、上坂氏は直近のグローバルにおける同社のハイライトとして、9万人以上の従業員が60カ国以上でITサービスを提供し、2023年度の売り上げが170億ドル、特許ポートフォリオは3000以上にものぼることを挙げ、基幹産業のミッションクリティカルシステムを30年以上支えている点を強調した。
そのうえで、同氏は日本のITインフラ市場の課題について「基幹業務システムのモダナイゼーションの遅れとDX(デジタルトランスフォーメーション)によるクラウドシフトに伴うシステムの複雑化、データセンター設備の老朽化とインフラの最新化の必要性、IT人材不足、セキュリティ、経済安全保障などを課題として抱えている。特にインフラ領域はまだまだ改善する余地がある」と指摘。
そこで、同社では今後数年間にわたり1億ドルの投資を実施する。これには「次世代のインフラ設備」「運用を高度化を実現するプラットフォーム」「人と社会、そして地球へ」の3つをテーマに取り組む方針としている。
上坂氏は「こうしたことを意思決定していくタイミングかつ転換期を迎えており、インフラを次世代化し、高度化することで活用できるプラットフォームにしていき、さらに担い手となる人と社会に対して、企業としてどのように取り組むかが求められている」と述べた。
国内のデータセンターを4拠点体制に
続いて、キンドリルジャパン 執行役員 最高技術責任者 兼 最高情報セキュリティ責任者の澤橋松王氏が説明に立ち、詳細を解説した。
上坂氏が言及したビジネス上の課題とニーズをふまえ、澤橋氏は「ビジネス上の課題とニーズをふまえ、われわれではグリーンエネルギーをサポートし、ハイパースケーラーとの接続性に優れた強固なデータセンターを持つ。また、さまざまなデータを活用した障害防止と消費電力を監視する運用ツールを活用していく。さらに、データを海外に持ち出さずに日本国内に移動させる。そして、インフラ設備とソフトウェアを永続的かつ安全に更新する。これら4つを重点的に取り組んでいく」と説明した。
澤橋氏が述べたように、現在のデータセンター(DC)は東日本1拠点(クラウドに近いDC)、西日本2拠点(同、災害リスクの低い大規模DC)の計3拠点を構えているが、これに東日本において大規模DCを新設。これにより、計4拠点体制とし、すべてのデータセンター間でパブリッククラウドの相互接続を提供するとともに、低遅延の接続を提供するという。
データセンターとネットワークを備えたうえで、運用プラットフォームの「Kyndryl Bridge」を標準サービスで提供することで、データセンターだけでなく、エンドツーエンドの安定的な稼働、障害の未然防止といったトータルなIT環境維持、持続的に更新できるような仕組みを提供していく。
運用ツールは上記のKyndryl Bridgeを標準プラットフォーム化し、IT運用の高度化・自立化を実現するという。アラートやチケットデータ構成情報、パフォーマンス、セキュリティなど、システムから発生するあらゆるデータを収集して、AIと自動化技術でIT全体や電力の見える化を行う。
ハードウェアやソフトウェアのEOS(End of Sale)/EOL(End of Life)やパッチ情報などの自動収集と管理機能、自動化により、継続的にパッチ適用、バージョンアップも実施する。
こうした技術的な側面に加え、人材面も含めた取り組みも進める。10月には、日本のITシステム運用を取り巻く、さまざまな課題の解決と価値提供を目的とした「次世代システム運用コンソーシアム」を設立し、システム運用に関する技術や知見を持ち寄り、システム運用に係る課題の解決やベストプラクティスの創出に向けて活動を開始。スキル育成としては、日本市場における有益なリスキリング、スキル取得支援を積極的に推進していく。
また、環境面では9月にキンドリル財団を発足し、サイバーセキュリティのスキルアップとサイバーレジリエンスを支援するNPO(非営利団体)への助成金を提供している。加えて、同社初の「コーポレート・シチズンシップ・レポート」を発行し、環境、従業員&コミュニティ、信頼を3本柱に掲げて、ESG(環境・社会・ガバナンス)の優先課題への対応のほか、ステークホルダーに対する長期的な創出というコミットメントを表明している。
最後に上坂氏は「われわれのインフラ領域は非競争領域であり、協業する領域だと考えている。単にITベンダーだけでなく、お客さまとも協業するものだ。だからこそ、日本らしく、ITインフラが使いやすいものとして共同で考えることに取り組み、日本のインフラが世界最高と呼ばれるまでの状態にしていきたい」と力を込めていた。