Ellipticはこのほど、「Record $7 billion in crypto laundered through cross-chain services」において、クロスチェーン犯罪により資金洗浄された違法な暗号資産が記録的な70億ドルに達したと報じた。
クロスチェーン犯罪とは、犯罪の起源を難読化するために異なるトークンまたはブロックチェーン間で暗号資産を交換する行為。多くの場合、犯罪による資金の出処を難読化するために連続して行われ、暗号資産の資金洗浄の主要な手段になる傾向にあるという。
Ellipticはクロスチェーン犯罪の調査に、同社のホリスティック対応ブロックチェーン分析機能という新しい調査手法を活用している。この調査により、2023年末までに65億ドルと予想されていたクロスチェーン犯罪が、70億ドルという予想より早いペースで増加していることが判明したという。2022年7月から2023年7月までの12カ月間に、クロスチェーン犯罪により27億ドルの資金洗浄が行われたとみられている。
この調査では、集中型取引所を除く以下の3つの主要なタイプの暗号資産サービスプロバイダーによるクロスチェーンおよびクロスアセットスワップに焦点を当てている。
- 分散型取引所(DEX: Decentralized Exchange) - 企業や組織に管理されることなくスマートコントラクトによって自動で暗号資産やトークンの交換を実現する
- クロスチェーンブリッジ - 異なるブロックチェーンプラットフォーム上の暗号資産間のクロスチェーンスワップを可能にする
- コインスワップサービス - アカウントの作成や本人確認を必要とせずに異なる資産間の交換を可能にする。通常は匿名のサービスとされる
Ellipticによると、クロスチェーン犯罪が最も多く増加した分野は、北朝鮮の脅威グループ「Lazarus」による暗号資産の窃取、詐欺、ネズミ講、資金洗浄とされる。このサイバー犯罪組織だけでクロスチェーン犯罪のおよそ7分の1を担っており、9億ドル以上の資金洗浄が行われたとみられている。
Ellipticはクロスチェーン犯罪に関するレポートを提供している(参考:「The State of Cross-chain Crime Report 2023 | Elliptic」)。このレポートではクロスチェーン犯罪の進化の過程、リスクの新たな起源についての考察、クロスチェーン犯罪に対抗するためのコンプライアンスや捜査上の課題に対処するための検討事項としてホリスティック対応ブロックチェーン分析機能の概要も取り上げているという。
暗号資産の窃取や、ランサムウェアの脅迫による身代金の要求など、経済的利益を求めるサイバー犯罪は拡大傾向にあり、北朝鮮を含む世界中の脅威グループによりさまざまな攻撃が行われている。
サイバー犯罪によって得た利益は何かしらの方法で資金洗浄する必要があり、法執行機関による追跡などにより押収や制裁などの対象となることがある。サイバー犯罪者はこれを避けるためにクロスチェーン犯罪による資金洗浄を行っており、今後拡大していくことが予想されている。Ellipticはレポートから法執行機関や政府機関がクロスチェーン犯罪に対抗する手段を学ぶことを推奨している。