北海道大学(北大)は10月10日、「草」と「木」の体を支える仕組みの違いに基づく、明快で新しい植物の分類則を発見したことを発表した。

同成果は、北大大学院 工学院の金浜瞳也大学院生、同・大学院 工学研究院の佐藤太裕教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

植物は、光の奪い合いを有利に進められるよう、充分な高さを獲得することが求められる。しかし体を支えるという観点から見れば、高さを実現するためには、体を硬く太くすることで直立した状態を維持する必要が生じる。

この点でにおいて、草や花などの細く柔らかい茎の草本植物は、樹木に代表される硬い外皮と太い幹を持つ木本植物と比べると、力学的に不利な感があるのは否めない。しかし、現存している草本植物は細くて柔らかい茎ならではのアプローチを取っている可能性もあり、その点を解明することは、体を支持する仕組みの違いという観点から、竹のような分類が曖昧な種も含め、木と草の分類を明確化することにつながる可能性があるとする。

そこで研究チームは今回、植物の「内部の水分がもたらす圧力」と「実現可能な最大高さ」の関係について、力学理論に基づく定式化と結果の洞察を行ったという。

草本植物は、乾燥状態では体が大きくたわむが、十分な水分が内部に蓄えることができればピンと張る性質を持つことから、草本植物の体を支える仕組みには、内部の水分が大きく関わっていると予想された。

今回の研究ではこの現象を力学的に捉え、草本植物に見られるような円筒形の構造では、内部に十分な水分が入ることによって生じる圧力が、植物を上部に引っ張り上げる張力に還元されることに着目したとのこと。この影響を取り入れた中空円筒形の計算モデルを導入し、構造力学の理論をベースに、内部水分による張力と実現可能な最大高さの関係の定式化を試みたという。

同計算モデルでは、重力とそれに逆らって植物の体を引き上げようとする張力が考慮されているが、自身の体を曲げようとする作用は、自身の重量(自重)に起因するものだ。そして、自重と反対の方向を向く張力は、自重の影響を低減させるため、張力の増加は最大高さを向上させる効果があると予想された。

そして定式化した結果、当初の予想通り、張力が最大高さの向上に著しく寄与することが判明。たとえば、張力の大きさが自重の半分の場合、その最大高さは、張力がまったく作用しない場合の約2.4倍だった。それだけでなく、張力が自重を上回る大きさに達する場合には、自身の重さの影響を完全に打ち消し、どのような高さでも、理論的には直立した状態を維持することが可能であることも明らかにされた。つまり、今回の結果から得られた主な結論は、大きく次の2点になるとしている。

  1. 内部の水分がもたらす張力は、到達可能な最大高さを著しく向上させる
  2. 張力が植物自体の重さを上回ると、到達可能な最大高さが自重による倒伏に支配されなくなる