日立エナジーは10月10日、同社がHVDC変換所を提供した洋上風力発電所ドッガーバンクウィンドファームにおいて、ドッガーバンクAの試運転と英国本土への初送電が実施されたことを発表した。

  • ドッガーバンクウィンドファームの位置と HVDC連系線のルート

    ドッガーバンクウィンドファームの位置とHVDC連系線のルート

ドッガーバンクウィンドファームは、英国本土から約130km 北東の北海に建設中の世界最大の洋上風力発電所。今回の初送電では、日立エナジーがHVDC システムの動作試験や性能確認に関する支援を行い、安全性と品質を確保しながら38カ月という短期間で実施に至ったという。

はドッガーバンクA、B、Cの3つの発電所で構成され、日立エナジーは2019年、ドッガーバン A、B向けに陸上HVDC変換所2基、洋上HVDC変換所2基の計4基を受注。2021年にはドッガーバンクC向けに陸上・洋上HVDC変換所計2基を受注した。

2026年の完成後は、英国の電力需要の約5%、600万世帯分に相当する3.6GWの電力を供給することが可能で、2030年までに電力需要の最大3分の1を洋上風力発電で賄うという英国政府の目標達成に貢献するという。同風力発電所は、約35年間の運営が計画されている。

洋上風力発電所からの長距離送電においては、送電による損失を最小限に抑られるHVDCが最適な方法だとし、洋上HVDC変換所は風力発電による電力を交流から直流に変換し、陸上に向けて送電する。送電された電力は、陸上のHVDC 変換所において交流に変換され、送電網に連系される。

このHVDC変換所に用いられている日立エナジーの自励式 HVDCシステム 「HVDC Light」は、変換所がコンパクトかつ電力損失が極めて低いという特長を有するほか、従来のHVDCシステムと比べてライフサイクル全体におけるCO2排出量を約3分の2削減するという。

日立エナジーのHVDC事業統括責任者であるアンドレアス・ベルトー氏は、次のようにコメントしている。「当社がドッガーバンクウィンドフ ァームのパートナーであることを嬉しく思います。喫緊の課題であるエネルギー転換に向けては、強固なパートナ ーシップと新しいビジネスモデル、世界的な基準が必要となります。HVDCは、より持続可能、より柔軟、より安心・安全なエネルギーシステムを実現し、クリーンエネルギーへの転換を加速させるものです。今回の送電は、英国における将来のエネルギー需要に対応するための重要なマイルストーンであり、英国をクリーンエネル ギー転換のリーダーにするための、SSEリニューアブルズとエクイノール、ヴァルグローンとのパートナーシップによって可能になったものです。」

また、ドッガーバンクウィンドファームのプロジェクト責任者のオリー・キャス氏は、「今回の初送電への日立エナジーの貢献に感謝します。日立エナジーのHVDCシステムは、洋上風力発電所からの長距離送電を可能にするものです。英国の洋上風力発電所において初となる HVDC 技術の導入に成功したことは、陸地から遠く離 れた海上でも大規模な開発が可能であることを示すものです。今後も、サプライチェーンにおける各パートナーと協力して、英国の家庭や企業、そして将来の世代のために、より環境に優しい安全なエネルギーシステムを構築していきます。」と述べている。