アストロスケールは10月4日、2023年度中にミッション開始を予定している商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ)」について、打ち上げ予定地であるニュージーランドに出荷したことを発表した。
ADRAS-Jは、大型デブリ除去などの技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業デブリ除去実証(CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstration)フェーズI」の契約の元、アストロスケールが開発してきたデブリ除去技術の実証衛星。打ち上げはRocket Labのエレクトロン(Electron)ロケットで行われ、射場はニュージーランド・マヒア半島の同社第1発射施設(Launch Complex 1)を予定している。
打ち上げ後、対象となるデブリであるGOSATを打ち上げた「H-IIAロケット15号機」の上段に徐々に接近。最終的には手を伸ばせば届く距離まで近づくことを目指すとしている。対象デブリは全長約11m、直径約4m、重量約3トンという大型デブリで、JAXAからは「デブリ接近計画に対する実績の確認」「対象デブリの定点観測」「対象デブリの周回観測」「ミッション終了処理」の4つのサービスが要求されるほか、アストロスケール自身も「対象デブリの検査および診断」「対象デブリへの極近傍接近」、そして現時点では非公開の「エクストラミッション」といった3つの独自ミッションを行う予定としている。
アストロスケールの代表取締役社長である加藤英毅氏は、出荷に際し、「衛星の製造完了と出荷はプロジェクトにおける大きなマイルストーンであり、これにより、本実証は開発のフェーズから打ち上げ・運用のフェーズに移行しました。ADRAS-Jの打ち上げ、そして軌道上で運用を開始することを心待ちにしています」とコメントしている。なお、エレクトロンロケットは9月19日の打ち上げ時に2段目に異常が発生しており、その原因究明が進められている状態。この影響で、当初は11月にも打ち上げられる予定であったADRAS-Jも打ち上げ延期となり、現在は新たな打ち上げ予定日を未定としている。