ガートナージャパン(Gartner)は10月5日、国内のIT子会社の実情に関する調査結果を発表した。これによると、IT子会社に関する喫緊の課題では、親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足が最も多い。

同調査は同社が2023年5月に、国内の従業員500人以上、売上規模1000億円以上の企業の、CIO、CTO、IT担当役員、最高デジタル責任者、最高データ&アナリティクス責任者、デジタル・ビジネス推進担当役員などを対象者に実施したものであり、有効回答者数は300社。

そのうち、連結対象・連結対象外・ITベンダーなどと共同出資のいずれかに該当するIT子会社があるとの回答は38.0%だった。

IT子会社を持つ企業に設立している主な理由を上位3つまでの選択で尋ねると、第1位に挙げた企業が最も多かったのは人件費の抑制(16.9%)であり、以下、システム開発コストの抑制(13.8%)、システム運用コストの抑制(12.3%)が続く。

最近ではデジタル技術やデータ活用など、いわゆるデジタル・トランスフォーメーション(DX)のために新たなIT子会社を設立する例が見られるが、今回の調査結果ではその割合は限定的だと同社は分析する。

  • IT子会社の設立理由(複数回答) 出典: ガートナージャパン

IT子会社に関する喫緊の課題について重要と考える順に第3位まで聞いたところ、第1位の割合が最も多かったのは、「親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」(16.2%)だった。

2番目には「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」「スピード感が不足している」の3項目が12.3%で並んでいる。

第2位と第3位に選ばれた割合も合算すると、「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」が33.5%と最多であり、以下「スピード感が不足している」(30.3%)、「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」(26.4%)が続く。

第1位として最も多く選ばれた「親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」は、第3位までの合算では25.6%で4番目だった。

  • IT子会社の喫緊の課題(複数回答) 出典: ガートナージャパン

同社ディスティングイッシュト バイス プレジデント アドバイザリの松本良之氏は、「今回の結果は、親会社のDXおよびIT戦略を子会社に任せる課題と考える企業と、そうでない企業との差が鮮明に表れた結果といえます。DXが親会社の経営戦略の中核になっている状況を直視し、共に将来を見据えて議論する必要があります。また、生成AIのような新しい技術による企業のビジネス・モデルや従業員の働き方への影響も今後予見されます。IT子会社の戦略転換の検討は、親会社にとっても子会社側にとっても重要な課題になっています」と述べている。