産業技術総合研究所(産総研)は、2023年10月1日に新たに先端半導体研究センター(SFRC)を設立したことを発表した。

  • 先端半導体研究センターの概要

    先端半導体研究センターの概要(出所:産総研)

昨今注目されている、データ活用を推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素を目指すグリーントランスフォーメーション(GX)の流れは、さらなる半導体需要の創出につながることが期待されている。また、経済安全保障の観点からみても半導体の重要性は増しており、2021年6月公開された経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略」(2023年6月改訂)においては、半導体製造基盤を日本国内に確保し、次世代技術の確立や将来技術の研究開発を推進する方針が明記されている。

産総研では、2022年6月に「次世代コンピューティング基盤戦略」を策定し、戦略の目標実現に向けた研究開発を行ってきており、今回のSFRC設立は、半導体に関する活動をより加速させ、日本に先端半導体技術を確保することを目標に行われた取り組みとなると説明している。

SFRCの特徴は、先端半導体向けの材料、デバイス、プロセス、設計、環境負荷評価の研究開発を促進させるとともに、共用パイロットラインの構築、社会実装、人材育成を一貫して推進することにあり、特に研究開発においては以下の5つの課題に重点的に取り組む予定だとしている。

  1. 2nm世代で実用化されるゲートオールアラウンド(GAA)構造の電界効果トランジスタ(FET)の基盤技術と先端構造技術の確立
  2. 2nm世代以降に向けた極限デバイス・材料開発
  3. 微細化によらずに性能を向上する3次元集積技術
  4. 最先端システムオンチップ(SoC)設計
  5. 半導体製造の環境負荷評価およびグリーン化

なお、これらの開発には共用設備であるスーパークリーンルーム(SCR)や未踏デバイス試作共用拠点(COLOMODE)、AIチップ設計拠点を主に活用し、これらの設備において研究開発と試作サービス提供、人材育成を一体として実施することにより、先端半導体のオープンイノベーションを推進する中核拠点となることを目指すとしている。