ソニーマーケティングは9月29日、ソニー本社(東京都港区)でビジネスソリューションの提案会を開催した。同提案会では、新しいワークスタイルに合わせたオンライン会議向けの機器や、リモートミーティングの効率を上げるオフィスソリューションが紹介された。

独自技術で映り込みを抑えた業務用4Kディスプレイ「BZ40L」

コロナ過を経て、現在では出社してのオフィスワークとリモートワークをフレキシブルに選択するハイブリッドワークが働き方の前提になりつつある。変わりゆくオフィスの在り方を背景に、ソニーマーケティングではトレンドに合った業務用機器の選定を顧客に推奨している。

ハイブリッドワーク時代の働き方に合った機器として、提案会では7月から発売を開始した業務用4Kディスプレイである法人向けBRAVIAシリーズの「BZ40L」(85型、75型、65型、55型)が例示された。

同ディスプレイには、アンチグレア技術とローリフレクション技術を組み合わせた「ディープブラック・ノングレアコーティング」という同社独自の技術が採用されている。これにより、コントラストや視野角を維持しながら、照明や日光、人の映り込みを抑えることができる。

ソニー製品の展示や顧客向けのイベントを開催しているソニーストア札幌では、BZ40Lシリーズが店内ディスプレイとして導入されている。従来、イベントがあった際は店内ディスプレイにスライドや写真を映していたが、照明が映り込んでしまわないようイベントごとにスタッフが高所の照明の位置・向きを調整していたそうだ。映り込みがほとんどないBZ40Lシリーズを導入したことで、イベント前の照明の調整作業が無くなったという。

  • 法人向けBRAVIAのスタンダードモデル「BZ30L」。正面から撮影したところ照明や人物が映り込んだ(左)、「BZ40L」を正面から撮影してみた。照明が当たったディスプレイ上部は白っぽくなっているが、映り込みはほとんどない(右)

マイクロソフト、Barco、ヤマハ製品と連携したオフィスソリューション

提案会の展示スペースには、BZシリーズと他社製品を組み合わせた、ハイブリッドミーティング向けのオフィスソリューションが3つ紹介された。

ミーティングスペース向けには、BZ40LのデュアルディスプレイとBarcoが提供する無線対応プレゼンテーション用機器「ClickShare」を組み合わせたソリューションが展示されていた。

同製品はPCとUCBケーブルで繋げる「ClickShare Conferencing ボタン」と、ディスプレイとHDMIケーブルで接続する「ベースユニット」で構成されている。PCと繋がった同ボタンを押すと、映像・音声、USB通信の信号が無線でディスプレイに送信される。そのため、ユーザーはケーブルレスでハイブリッドミーティング環境を整備することが可能だ。

  • 「BZ40L」と「ClickShare」を組み合わせたソリューション展示。手前にあるのが「ClickShare Conferencing ボタン」で、ディスプレイ下中央のビデオバーの右にある機器が「ベースユニット」だ

    「BZ40L」と「ClickShare」を組み合わせたソリューション展示。手前にあるのが「ClickShare Conferencing ボタン」で、ディスプレイ下中央のビデオバーの右にある機器が「ベースユニット」だ

通常、ベースユニットは単体で電源を入れなければいけないが、ClickShareとBRAVIAは電源状態が連動しているため、BRAVIAのディスプレイ電源を入れるとベースユニットの電動が自動で立ち上がり、電源をオフにするとベースユニットの電源が切れる仕様となっている。

  • 「BZ40L」と「ClickShare」を組み合わせたソリューションのシステム図

    「BZ40L」と「ClickShare」を組み合わせたソリューションのシステム図

カンファレンススペース向けには、BZ40Lのデュアルディスプレイと会議室向けの「Microsoft Teams Rooms」、ネットワーク上のさまざまな機器を一括管理・制御できる「CrestronConnected」を組み合わせたソリューションが展示されていた。

同ソリューションの最大の特徴は、CrestronConnectedを用いたデバイスの一貫制御だ。Crestronのコントロール規格にソニー製品が対応しているので、会議の進行担当者は操作用タブレット1台で同社製のディスプレイ、カメラ、マイク、スピーカーを制御できる。例えば、複数台の資料共有用PCをディスプレイに繋いでおき、会議の進行に合わせて操作用タブレットでディスプレイの入力を切り替えるといった使い方ができるそうだ。

  • 「BZ40L」と「CrestronConnected」を組み合わせたソリューションのシステム図

    「BZ40L」と「CrestronConnected」を組み合わせたソリューションのシステム図

時間を決めずに、少人数で短時間の打ち合わせを行うハドルスペース向けのソリューションでは、「BZ35L」とヤマハのカメラ・マイク一体型カメラバー「CS-500」を組み合わせたソリューションが展示されていた。

突発的なミーティングで使用するスペースでは、携帯して利用する安価なスピーカーなどが利用されがちだ。しかし、そうした製品には無指向性のものが多く、オンライン参加者には発話者の周囲の音声が届いてしまうことが珍しくない。その一方で、使用頻度の観点から、指向性があり高音質なビデオバーが設置されることも少ない。

CS-500は指向性のあるマイクと「SoundCap Eye」というヤマハの独自技術により、AIによる映像解析で会議参加者の顔の位置を追跡して会議参加者の声をクリアに収音しつつ、人がいる方向以外から発せられた雑音を抑制することができるという。

  • ヤマハのカメラ・マイク一体型カメラバー「CS-500」

    ヤマハのカメラ・マイク一体型カメラバー「CS-500」

BZ35Lをはじめ、法人向けBRAVIAにはコンシューマー向けの同製品と同じ音響系が搭載されているため、他社ディスプレイと比べてもよりクリアな音質を実現可能とのことだ。展示スペースでは、BZ35Lと他社製ディスプレイを並べて、原稿を読み上げる音声を聞き比べた。筆者が聞いた印象では、BZ35Lから流れた音声のほうが、音のこもり感が少なく、前に音が出てきているように聞こえた。

  • 「BZ35L」と「CrestronConnected」を組み合わせたソリューションのシステム図

    「BZ35L」と「CS-500」を組み合わせたソリューションのシステム図

ソニーマーケティングの担当者によると、「ハイブリッドワーク時代のオフィスには、リモートワーク以上の付加価値を作り出すことが期待されている」という。例えば、オフィスにいることで社内コミュニケーションが醸成されたり、チームの活動が活性化したり、会社から効果的な情報発信が行えたりといったことだ。

企業が自社にとって最適なワークスタイルを模索する中で、同社は顧客の機器選定をサポートするとともに、業務用ディスプレイを軸にしたオフィスソリューション提案を今後も続けるという。