ロームは9月28日、距離測定・空間認識用LiDARを搭載する産業機器分野のAGV(無人搬送車)やサービスロボット、民生機器分野のロボット掃除機などに向けて、高出力半導体レーザダイオード「RLD90QZW8」を開発したことを発表した。

  • ロームはAGVやロボット掃除機などの自動走行で重要なLiDAR用高出力レーザダイオードの新製品を開発した。

    ロームはAGVやロボット掃除機などの自動走行で重要なLiDAR用高出力レーザダイオードの新製品を開発した。(出所:ローム)

近年、AGVやロボット掃除機、自動運転車などといった動作の自動化を必要とする幅広いアプリケーションにおいて、正確に距離測定・空間認識を行うことができるLiDARの採用が広がっている。その中で“より遠く”まで、“より正確”に情報を検知する機器を実現するため、光源となるレーザダイオードには出力と性能の向上が求められているという。

こうしたニーズを受け、ロームは、レーザの狭発光幅化を実現する特許技術を確立し、LiDARの長距離対応・高精度化に貢献してきた。同技術は、2019年に開発された25Wレーザダイオード「RLD90QZW5」や2021年に開発された75Wレーザダイオード「RLD90QZW3」にも採用されている。そして今般同社は、市場からのさらなる高出力化ニーズの高まりを受け、120W出力が可能な新製品の開発に至ったとしている。

  • 今回開発された「RLD90QZW8」。

    今回開発された「RLD90QZW8」。(出所:ローム)

新製品のRLD90QZW8は、3D ToFシステムを用いたLiDAR向けに開発された赤外120W高出力レーザダイオードで、独自の素子開発技術によりレーザ波長の温度依存性を一般品比で66%減となる⊿11.6mm(平均0.10nm/℃)まで低減させているとのこと。これによりバンドパスフィルタの狭小化に寄与し、LiDARの遠方検知に貢献できるとする。

また発光幅は270μmと業界最小クラスでありながら、その97%にあたる264μmの領域で均一な発光強度を実現しており、LiDARの高精細化につながるとのこと。加えて高い電力光変換効率(PCE)も実現しているため、高効率な光出力が可能になることから、LiDARの低消費電力化にも貢献するとしている。

  • 新製品の特徴。

    新製品の特徴。(出所:ローム)

さらに、新製品の評価・導入に必要となる設計データはローム公式Web上に無償公開されており、素早い市場導入をサポート。LiDAR用途でのレーザダイオード駆動で必要となるナノ秒オーダーの高速スイッチングについても、同社が開発したEcoGaNシリーズの150V GaN HEMT、およびゲートドライバを組み合わせたリファレンスデザイン「REFLD002」をWeb公開しているとする。

  • Webにて公開されているLiDAR向けリファレンスデザイン

    Webにて公開されているLiDAR向けリファレンスデザイン(出所:ローム)

なお、新製品は2023年9月よりサンプル出荷を開始しており、サンプル価格は3500円/個(税別)で、コアスタッフオンラインおよびチップワンストップからも販売しているとのこと。同年12月より月産20万個の量産を開始する予定だとしている。また車載対応(AEC-Q102準拠)に向けたレーザダイオードの製品開発も進めており、そちらは2024年度中の製品化を目指しているとした。