IIJは9月27日、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するプロジェクトにおいて、各フェーズに適合した特性を持つ人材を見定め、組織における適正配置と人材の育成を支援するサービス「IIJ DX人材アセスメントソリューション」を提供すると発表した。
同サービスでは、デジタル技術の基礎知識を測る「ITテスト」と、組織の変革に関わるマインドや特性をみる「DXテスト」の2つのWebテストを実施し、その結果をIIJのDXコンサルティングの経験と知見をもとに開発した「Digitalection(デジタレクション)」のAIエンジンで分析し、個人の能力や特性をアセスメントレポートとして提出する。
ITテストは、IPAの「ITパスポート試験」に相当するレベル設定で、一般業務の中でのIT活用やデジタル化の取り組みにおいて、最低限把握しておきたい知識に関する内容が問われる。一方、DXテストはアンケート形式で、日常の業務への取り組み姿勢、視座、優先順位を持った行動特性があるかどうかなど、個人の特性を測り、イノベーター理論に基づき特性タイプを割り出す。
IIJ プロフェッショナルサービス第一本部 コンサルティング部 副部長 中津智史氏は、新サービスについて、「組織全体の人員の配置の最適化と不足しているDX人材をわれわれが補填することを実現し、人材の育成を支援するもの」と説明した。
中津氏は、新サービスが、もともと同社が抱えていたDX人材の配置にまつわる課題を解決する中で生まれたものだと説明した。各人のスキルを十分踏まえてDX人材を配置しても、すべての人が活躍できるとは限らないのが実情だという。IIJの場合、プロジェクトにおけるDX人材のアンマッチの割合は43%に上り、これらの人材に対し教育や育成を行うことで修正軌道できた割合が32%、役割を見直すことでリカバリーした割合が24%となり、それ以外の人は従来の仕事に戻したという。
しかし、新サービスを活用することで、プロジェクトにおけるDX人材のアンマッチの割合は5%にまで激減。中津氏は、「このサービスを使うまでは、人材の獲得競争の最中にいたが、今は、人材不足を解消できている。既存の人材を有効活用することで、人材不足という課題を解決できる」と語った。
さらに、中津氏は「日本のDXがうまくいかないのは、DX人材がアンマッチを起こした時、プロジェクトの遅延を起こすからといって、再教育や役割の見直しを行わないから。こうならないよう、最初から、人材が活躍できる状況を整備することがDXのカギ」と、日本企業のDXにおける問題と解決策も提言した。
新サービスで提供するレポートは、DX推進組織・プロジェクトにおける個人の「適性」と「伸びしろ」を、イノベーター理論に基づいて可視化している。イノベーター理論とは、新たな製品(商品・サービス)などの市場における普及率を示すマーケティング理論。新たな製品の普及の過程を、これらを採用するタイミングが早い消費者から順番に、イノベーター(革新者)、アーリーアダプター(初期採用者)、アーリーマジョリティ(前期追随者)、レイトマジョリティ(後期追随者)、ラガード(遅滞者)の5つのタイプに分類している。
同社のレポートでは、この5つの分類を、「戦略」「企画」「開発・評価」「 展開・運営」というDXのフェーズに当てはめて、組織内の人材分布を明らかにする。
加えてレポートでは、組織内の人材分布や組織傾向を分析することで、「どのフェーズで誰を配置するか」「どう育成するか」「外部からの人材活用が必要か」など、DXプロジェクトを進める上で必要となる人的リソースの管理に関わる情報を提供する。
中津氏によると、新サービスを先行導入している企業は10社近くあるという。そのうちの一社である大和ハウス工業は、DX推進に適したチーム編成を目指し、同サービスを利用。以前は、経験から培った感覚値で個人の向き不向きを判断していたが、アセスメント結果がこれまでの感覚値と一致していたという。
新サービスのターゲットはユーザー企業にとどまらず、DXに関するサービスを提供するIIJと同業のITベンダーも含まれている。先行企業にもITベンダーがいる。中津氏は、「顧客から請け負ったプロジェクトにおいて人材がアンマッチとなってしまった時、人材を追加して投入して対処するが、コストがかかってしまう」と述べ、ITサービスを提供する側にとっても新サービスを利用するメリットがあると強調した。