高血圧患者に対する治療アプリの効果を確認

治療アプリの開発を手掛けるCureAppは9月26日、高血圧症患者向け治療アプリを用いた「スマート降圧療法」の効果について確認し、第45回日本高血圧学会総会でその結果を発表したことを明らかにした。合わせて、同日に東京都内の会議室で記者説明会を開いた。

  • 記者説明会での一幕

    記者説明会での一幕

同社が開発した高血圧治療アプリは薬事承認を受けており、医師によって高血圧患者に処方される。アプリは患者に対して1日におよそ3回のタッチポイントを持つ。朝と夜に血圧測定を促して結果を記録するほか、日中は減塩や運動など患者が取り組むべきコンテンツを提案する。夜にはその内容を達成できたかできなかったかをアプリに記録する。

  • 実際のアプリ画面

    高血圧治療アプリの画面

解析の結果、アプリ使用開始から12週間後の収縮期血圧(いわゆる上の血圧)は起床時でマイナス8.8ミリメートル水銀柱(mmHg)、就寝前はマイナス8.5mmHgとなり、治験で検証されていた患者よりも幅広い患者集団における実臨床での降圧効果が確認されたとのことだ。

アプリ開発段階の治験実施時には、患者集団に65歳以上の患者は含まれていなかったという。しかし今回の結果には、65歳以上の患者のデータも含まれているそうだ(最高齢は87歳)。そこで、65歳以上の患者のデータのみを解析すると、収縮期血圧は起床時でマイナス11.8mmHg、就寝前はマイナス10.1mmHgと顕著な結果が見られたという。

  • 治療アプリの利用結果(全体集団)

    治療アプリの利用結果(全体集団)

  • 治療アプリの利用結果(65歳以上のみ)

    治療アプリの利用結果(65歳以上のみ)

  • 治療アプリの利用結果(もともと服薬していた患者への効果)

    治療アプリの利用結果(もともと服薬していた患者への効果)

CureApp代表取締役社長の佐竹晃太氏は「治験のように条件を厳しく定めた環境ではなく、リアルワールドデータを用いても患者さんに対してアプリの効果を示せた。薬事承認を受けた治療アプリを用いたデータの公開は、これが世界で初となる」と喜びを語った。

  • CureApp 代表取締役社長 佐竹晃太氏

    CureApp 代表取締役社長 佐竹晃太氏

新しい治療法としてのアプリ利用とは

従来の治療といえば、医薬品や医療機器、手術器具などを用いたものが主だった。しかし近年はICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)やデジタル技術の基盤が整い、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスを用いる治療法も見られ始めている。

ちなみに、日本国内で初めて薬事承認を取得した治療アプリは、CureAppが開発したニコチン依存症患者向けのアプリだ。これらのアプリは科学的なエビデンスに基づいて薬事承認を受けており、医師の処方によって使用できる。

同社が開発した高血圧治療アプリは2022年9月に販売を開始し、約1年が経過した。患者向けのアプリ画面ではバーチャルナースによる動機付けや、知識の習得、行動の習慣化によって継続を促す。収集したデータは医師向けのアプリで閲覧できるため、患者の実生活を把握できるようになり、効果的な生活指導が行える。

一般的なPHR(Personal Health Record)アプリと比較して、治療アプリは科学的に有効性が確認されているものだ。医師側がデータ管理の主体となって、保険診療で用いる。野村医院の院長である野村和至氏は「一般PHRアプリは健康食品、ある疾患に特化したPHRアプリはサプリメント、治療アプリは医薬品のようなイメージ」とそれぞれの違いを紹介した。

  • PHRアプリと治療アプリの違い

    PHRアプリと治療アプリの違い

また、実際にアプリを処方したという野村氏は、「もともと服薬していた患者に対し、治療アプリを用いたスマート降圧療法を行ったところ、8人中4人が減薬に成功した」とも、話していた。

  • 野村医院 院長 野村和至氏

    野村医院 院長 野村和至氏